「これぞ職人技!」すばらしき映画音楽たち N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ職人技!
映画好きなら絶対に、あのシーンに入るあの音楽がタマラナイ、
聞くだけで思い出して涙腺崩壊の名曲、というものがあるはず。
本作はそうした数々の映画音楽を作り、
作品を影で日向で支える作曲、編集、演奏家たちのドキュメンタリーだ。
その専門的で、案外やっつけがブラック企業並みの仕事ぶりに驚かされた。
だが考えてみれば、そらそうだろう。
映像が出来上がってからしか音楽はつけられず、
そして編集まで仕上がってきたということはつまり、
ガンガン告知も行き届いた上映初日なんてもうすぐそこ。
この隙間を縫っての突貫工事が、音付け作業というわけである。
加えて、オケ録などどこで練習しているのだろう、と守秘義務について過ったなら、
演奏家たちはその場でスコアをもらい、
練習抜きで録音してゆくのだと知り驚かされた。
そりゃ、家で何日も練習していたら新作の秘密もダダ漏れだよなっ。
もうプロフェッショナルが恰好良すぎて、シビれる!
仕上がった映像を見ながら作曲家たちが、監督のイメージをヒアリングしつつ
曲の方向性や入れるタイミングをすり合わせてゆく作業も印象的だった。
もちろん作曲できないから監督なのだし、
つまり専門的なやり取りは出来ないというディスコミュニケーションの極致から
あの楽曲は引き出されてきたのかと思えば、
もう作曲家の能力も楽曲の誕生もミステリアスでしかない。
音楽は唯一、目に見えない、触れることのできない芸術だと、作中でもインタビューがあった。
だのに的確と操り、時に視線を誘導し、物語への感情移入を高める映画音楽のプロフェッショナルの皆様には、
マジ、お世話になっています。ブラボー! と拍手の嵐だ。
いや、本当に映画好きにはたまならい良作だった。
ちなみに私のイチオシ作曲家は「テルマ&ルイーズ」以来、
今となっては大御所のハンス・ジマーである。