「トップオブザワールドの大学でのお粗末な実験」プリズン・エクスペリメント いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
トップオブザワールドの大学でのお粗末な実験
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スタンフォード大といえば、東大よりも入るのが難しい知の巨人が集う最高学府であることは容易に想像が出来る。そんな最高水準な場所での最悪な実験として今だ語り継がれている監獄実験が今作品の話である。ドキュメンタリーではないが、かなり細部まで再現されているのだろう、調べてみるときちんと出来事を踏襲しているようだ。勿論多少の演出は映画なので施されてはいるが、『es』に比べて今作品は史実に忠実である。
ただ、今作品を観ていて改めて思うことは、実験結果である、『権力の服従』『非個人化』というお題目が霞むほどの、隠れキャラの存在が際立っている。それは、看守役、囚人役双方に核となる人物が自然と現われ、その二人の鬩ぎ合い、その先の心理学者との対決が今作品のキモになっているのである。核となる人物の変貌や、挫折、その心理描写をテンポ良く描いている点に於いて、スリリング且つ、サスペンス要素も楽しめる仕上がりである。2015年の制作なのだが、1970年代のザラザラと粗野な質感等をフィルムに再現している点も又、よりリアリティを感じさせる。
どんなに頭が良くても、否、頭が良いからなのか、人間はこうやって堕ちていくことを如実に現わしている作品であった。
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