「マイノリティのガイドブック」パーフェクト・レボリューション いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
マイノリティのガイドブック
相変わらず、リリーフランキーの器用さが今作品でも発揮している演出である。いわゆる『うさんくさい』役は勿論演技もさることながらビジュアルでのキャッチーさが突出して選択されるのではないだろうか。そういう意味では今の芸能界でこの人以外に当てはまる俳優は、もう下北辺りで舞台俳優を捜すしかないのではないかと思う。勿論、今作品の演技も、以前から知り合いだったという障碍者の人との普段の繋がりからの観察が生かされているということで、特徴を上手く掴みつつ、しかしオーバーにはデフォルメせずなんなら観客の『いたたまれなさ』を配慮して、マイルドに仕上げていて絶妙である。只、役年齢よりも高いリリーであり、少々老成感が否めないので、その年齢なりの感情の強弱が足りなかったのかなぁとは感じる。
本題だが、勿論、主役は小さい頃の脳性麻痺が原因での四肢障碍を煩う障碍者が、それでも持ち前の表現力の強さでパーソナルな部分を通じて自分の置かれている立場を世間に公表している最中、突拍子もなく、在る女性に好意を持たれるところからストーリーが動き始める。劇中音楽のチョイスが素晴らしく、特にオープニングの曲はこれからの期待を膨らませるに充分な曲調だ。
展開が進むにつれ、実は本当の主人公は、障碍の彼ではなく、好意を寄せた女の子であることが分かってくる。常に相手を驚かす言動を繰り返すこの女性は、パーソナリティ障碍を患っていて、その生い立ちのせいでかなり苦しんできたのだが、常に前向きで自分を変えたいと頑張る姿勢に、徐々に男は惹かれていくのだが、世間との軋轢や、身近な周りのサポートや家族への衝突等を繰り返していく内、その疾患は酷くなり、メンタリティは瓦解始め、最後は心中を企てるところ迄メンタルがやられてしまう。そんな中でこの二人の革命である『障碍者同士の家族』という革命は成就されるのかというクライマックスで、どんでん返しが待っているのだが、これがとても心地よい展開になっていて、所謂『素敵な』映画に仕上がっている。一寸した感動を得られる。
どうしてもこの手のテーマは重く突きつけられてしまいがちだが、実は今作品は決してそういうマイノリティの人達だけの話ではないのだろうかと感じる。例えば、国籍の問題等も当てはまる事が多いのではないだろうか?
とはいえ、きちんと障碍者の問題が随所に描かれており、常人では気付かないこと、いわゆる『あるある』ネタも差し込まれている。酔っぱらわないと本音を言えない奴や、頭に血が上ると何をしでかすかわからないヘルパーの旦那、等々、現代の闇も又ストーリーにうまく織込まれそれを綺麗にストーリーに昇華させているところも秀逸である。ヘルパーの女性の心の置き所が今イチ難読であったが、これはこれでそういう微妙な位置なのだろう。
作品名は仰々しいのだが、丁寧にこの問題を拡げながら決して暗い気分にさせない絶妙さに評価をしたいと思う。