リズと青い鳥のレビュー・感想・評価
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オーボエとフルートの可憐な輪舞
響け!ユーフォニアムのサイドストーリー。
監督はテレビシリーズ演出の山田尚子。
久美子たちの一つ上の上級生たちの親密な関係と、その葛藤が描かれます。
【ストーリー】
吹奏楽部のオーボエ担当の鎧塚みぞれと、フルートの傘木希美の二人は親友。
一度心が離れた経験から、孤立しがちなみぞれは希美に依存気味になる。
そんな中、劇中曲『リズと青い鳥』がコンクール演奏曲として選ばれる。
高い技術を持ちながら引っ込み思案なみぞれは、楽曲の中心となるソロパートを任されながら、どうしても自分を前面に出した印象的な演奏ができない。
みぞれの心配をする希美だが、「リズと青い鳥」のストーリーをたどるうちに、思い切れない彼女の繊細さに安心しているのは自分だと気づく。
みぞれと希美の関係を、劇中劇「リズと青い鳥」と重ねて見せることで、彼女たち自身に未来を選ばせる展開は見事。
京都アニメらしい繊細な日常描写と、山田尚子監督ならではの演技とカメラワークで、二人の少女の思春期の終わりを、鮮明に照らします。
多感な高校生活の陰りと輝きを鮮烈に描くユーフォシリーズでも、一風繊細な空気をはらむ今作。
完成度が高く、単体の映画としても楽しめるようになっています。
鑑賞後、二人と同じ気持ちになれたあなたには……ハッピーアイスクリーム!
ジョイント
ずっとずっと、一緒だと思っていた。
主人公と劇中童話と曲名の3重奏
上位カースト系ののぞみが実力世界で挫折、嫉妬した話。 主人公はのぞ...
ハイクオリティ・アニメ映画
美しい映像(現実パートと寓話のパートを使い分けている)やBGM(後半の吹奏楽演奏のシーンは本当に良かった)も素晴らしかったけれど、進路、愛する人との別れ・・・
寓話で語られる”飛び立たなければいけない鳥の少女”と”それを見送る少女”
見送ることしかできない少女と重ねていた”みぞれ”が実はものすごい才能があって飛び立たない鳥だと気づく・・・”のぞみ”との別れを予感させる切ない終わりだけれど明るい未来が待っている、進路や将来について悩む学生の姿を上手く描いている、そう考えさせられる映画だった
限定空間での繰り広げられる想いと束縛。
数ある京都アニメーション作品としても、映画としてもとても好きな一編。
テレビアニメ『響けユーフォニアム』の番外編的位置付けのほぼ独立した作品だが、個人に京都アニメーションの若手山田尚子監督が有能なスタッフたちと特に感性と才能を最大限発揮した作品。
絵本の世界感から現実世界に移る冒頭の登校場面から、ただ歩いて友人を待つだけなのに、惚れ惚れする様な描写と音楽で奏でられる心地良い進行で、タイトルが出るまでで主役である鎧塚みぞれと傘木希美の関係性と性格を観客に伝える巧みな導入部に魅入られてしまう。
物語は、みぞれと希美の片想いの愛情にも近い関係をベースに、演奏科目である「リズと青い鳥」の絵本世界を交差させてゆく。
正直な話し、2期目のテレビシリーズにも登場している本作二人のキャラクターだが、実はあまり印象がなく映画に感心してから、2期を見直して確認した次第だが、物語の視点が変わるとこれほど良い意味で違いが出るのかと改めて思う。
アニメーションの人物表現は、俳優が演じる実写と違い、演出と作画と声の演技が融合してゆくものなので、細かくて微妙なニュアンス的な表情や動作を見せるのには、不利な面が多々有るが、逆にどんな描写も制約のない絵で表情することが、可能で作り手のイマジネーション次第の側面もあり、この作品はとてもタイトだか美しく豊潤である。
アニメキャラの記号的表現の一つに、照れると顔か赤くなる描写があるが、この作品でも最初の僅かなカットにみぞれが頬を染める場面が、控えめにあり、恋愛感情の様なミスリードを誘っている。
キャラクターデザインについて
テレビシリーズの『響けユーフォニアム』でのキャラクターデザインを担当した池田晶子に代わり、「聲の形』で山田監督と組んだ西屋太志が担当したこの映画用のキャラクターデザインは、いわゆる肉感的で可愛いらしい今時女子高生なデザインの池田晶子より、少女漫画的繊細さと制服の丈の長さや、一部カットにある特徴的な伸びた首筋など、ニーム感もありテレビ版とは違うの独特の雰囲気や表現を際立たせている。
背景や彩色について
季節は夏に限定されているが、主な舞台である学校の場面は、青い鳥や夏服の色である青で彩色設定が統一されており、季節に関わらずクール印象で作品全体の落ち着いたトーンを作品に与えている。
声の演技について
最初に鑑賞した時に、主役二人の声の演技も通常のアニメ作品より抑揚を抑えており、静かな作品世界に合わせてトーンを変えていると感じる。
2期目のテレビシリーズにも登場しているキャラクターだが、実はあまり印象がなく映画の後に見直しで確認した次第だが、希美役の東山奈央は、多くのアニメ作品で、演じている明るいトーンでの活発な女性キャラなどの延長線にある役だか、多くの近しい友人で、同格だと思っていたみぞれの才能に複雑な感情や焦りを抱く希美を、巧みに表現している。
個人的に発見だったのは、人見知りで無口だが、徐々変わってゆく主人公みぞれ役を種崎敦美が、静かで抑制をきかせた演技で見事に演じていて、普段のややハスキーな声から分からない声質に変えていて驚く。
2014年のテレビアニメ『大図書館の羊飼い』でのハスキーボイスで小悪魔的な立ち振る舞いが印象的だった小太刀凪の声の人と配役を見てから気付いたくらいだった。
専業の声優の演技の多くは、正確な発音を台詞に沿って演技することが、多くの場合に求められると思うが、そこにある種の媚びやあざとさを持ち込んで、ウンザリする作品もあるが、この映画に関しては、抑えられており、それが音響監督の指示だとしても、多くの作品にある分かりやすい萌や媚び演技は、そろそろ一考した方がいいのではと思う。(それ求める一定のアニメファンいるのも判るが個人的見解です)
童話の世界について
劇中の童話「リズと青い鳥」の描写や世界観は、絵本を思い起こすカラフルな美しさだが、抑えられており本編の淡い色と統一されており、主な舞台である学校の場面と並べても違和感なく観れる。
そして動きの少ない学校本編とは、違い欧州を連想するの街の様子や月夜の静けさと一転した嵐の夜の風と木が荒れ狂う描写とリズと青い鳥の娘が、生活描写の中に動きを取り入れてあり、特に小さな丘の斜面で戯れる浮遊感に満ちて描写などは、ジブリなどに見られるものに近く京都アニメーション陣の技術と演出の確かさが判るところだと思う。
キャラクターの配置と物語について
テレビシリーズから一新されたキャラクターがありの本編とは違い鎧塚みぞれの視線で描かれる部分が多くて、本編でお馴染みの葉月や緑輝達がみぞれ視点だと関心が薄くて見切れていたりするのは、苦笑だが、彼女の心境を炙り出している演出だと思う。
その辺はみぞれの親友との想いとは裏腹の無意識無関心な距離感がある希望の心境とも重なる。
暗い話にややもするとなりそうなだか、希望とみぞれと同じ三年生で吹奏楽部の部長と副部長コンビであるデカリボンの吉川 優子と中川 夏紀のやり取りや、みぞれを慕う同じオーボエの一年生剣崎 梨々花のちょっとまったりとした雰囲気がみぞれに心境の変化を与えて和ませてくれるので、全編を通して明るい。
本編の主役である二人の久美子や麗奈も完全に脇に廻っているが、所々に重要ポイントや影響を与えているストーリーラインと脚本は、近年の質的な充実が驚異的でもある吉田玲子。
初期はテレビアニメ界がメインで活躍していた人だが、テレビ出身の脚本家が映画を担当すると、今一つな作品が多い中、良作を多数手掛けており、実写作品『のぼる小野寺さん』は、まだ未見だが信頼できる見巧者達からの評価が高いので楽しみにしている。
余談だがテレビと映画には、視聴環境や制作方針フォーマットの違い以外に個人的に思うのだか、テレビの名脚本家が中々映画で結果を出せないのには、何か特有のものがあるのか?
監督の山田尚子は、これまで3本の劇場用映画を監督していて、どの作品も明らかに高い出来栄えの水準で、標準的な出来の映画『けいおん』以外では、テレビシリーズの扱いが中途半端で報われない少年モチゾーに焦点を当てて作品世界を完結させた良作『たまこラブストーリー』と個人的に引っかかるところあるが傑作『聲の形』と女性としては、多くの良作アニメーション映画を監督している。
女性らしい繊細な演出と書くと近年では問題あるかもしれないですが、特徴的な画面演出で足元をアップにして各キャラクターの性格を見せる描写は、多くの作品に共通する特徴で、作品順に鑑賞すると変化や思考錯誤が分かり今作では、音楽の融合も良くて最も洗練されたカタチで使われている。
アメリカの名匠ジョージ・スティーヴンス監督は、第二次世界大戦で陸軍映画班として多くの戦場や強制収容施設を映像に記録してから作風が変化したとの指摘もあり、悲しい出来事を受けてからの山田監督の変化については、次作品を期待していると同時に、受けてしまった影響に言葉が上手く出ません。
願わくば、悲しい出来事で亡くなったスタッフの方々への想いも含めて語り継ぎ、まだ書込みたい部分もある本作なので、思いついたら追加していきたいと思うほどにお気に入りです。
アニメーションだからできること
凄いよ。この映画は凄いところが沢山あります。
まず作画が凄い。表情の微妙な変化や歩き方、姿勢だけでキャラクターの性格や関係が分かるって本当に凄いことだと思う。さすが京都アニメーションって感じですね。アニメだからこそ目だけをドアップで映し出されても嫌悪感はないし目で演技もできる。悲しいかな実写化は不可能でしょうね。
そして音楽。本作は吹奏楽部での青春のため必然的に音楽シーンが多くなるわけです。それがねまた凄い。劇場で見なかったことを後悔するレベル。「映画けいおん」を見たときにも思ったんですが本当に凝られているんですよね。一度目の演奏と二度目の演奏は本当に違うし音質もオーケストラがすぐ間近にいると錯覚するレベルのクオリティです。
そして声優さん達の演技ですよね。主役からモブまで違和感なく聞けるので映画に没頭できます。特に東山奈央さんにはびっくりしました。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」のガハマちゃんしか知らなかったのでこんなに静かな役もできたのかと驚きました。(ガハマも静かなシーンはありますけど所々ギャルっぽさが出ているのでね。)
二人が本音で話すシーンでは自然と涙が出てきます。
是非ご覧ください。
あまりに繊細ででもしなやかな細い糸のような。
登場人物の瞳の動き、一束の髪の揺れ、歩き方。
作中で説明的な描写はほとんどなくとも、そこから様々な心の動きが伝わってくる。
そしてそれを受け手がじっくり受け取って考える間(ま)もたくさんとられている。
作画の美しさ、繊細さ、あまりに丁寧な人物の描き方。
すさまじく美しいアニメーション映画だった…。
特に人物の目。目の描き方。素晴らしい…。
繊細で静かな作品ながら、メイン人物のみぞれと希美の関係は最初から危うさがあって、作品全体にずっと緊張感がある。静かに、でもハラハラしながら2人の関係のゆらぎと行く末を見守る90分だった。
あと2人をそばで見守る夏紀と優子の同学年コンビが本当に良い。こんな良い同級生に恵まれたらいいよね。
2人の関係に重なりながら展開していく「リズと青い鳥」というストーリーと楽曲もとても素敵だった。
弱く儚く強く脆い
この作品を観るとき、覚悟をしてから観始めた。
今作を観る前に『響け!ユーフォニアム』の二期を観ていて最終回に別れのときの意味分からないけどなんか泣けてくる感覚に陥り泣く寸前だったからだ。
そんな状態で観たら涙腺崩壊しそうだったので覚悟した。
冒頭の友達と歩き朝練へ行き楽器を吹く。そんな日常を淡々と描き、特に感動要素無いのに何故か泣きそうになる。
『聲の形』のときにもなったけど、何故だか山田尚子監督作はどうってことない日常を描いているだけなのに喉が締め付けられて涙が溢れそうになる。
短編映画的な情緒深いカットで観ているだけで画面に引き寄せられる目に見えない「力」がある。
その力は繊細で優しくて儚い。
この「力」はいったい何処から来ているんだろう?と気になって作品を分析しようとしたがこりゃダメだ。
分析すればするほど何故だか胸を締め付けられて泣きそうになる。そしてどんどん力の正体は離れていく。
本当にこの力はなんだろう。
美しいアニメーションと繊細で弱く美しく強い少女の心情を言葉ではなく、演出として表現していたり、軽く楽しいようでいて、何処か切ない牛尾憲輔の音楽によって創りだされている「力」だと思う。
でもどんな力かは分からない…
分析するために作品を思い出す度に泣きそうになるし。
とにかく断言出来ることは山田尚子監督の才能は素晴らしいということだ。
あと音がめちゃくちゃいい!
家の2.1chのスピーカーでもまるで映画館みたいに音が駆け巡っていた。
それとオーボエね。
自分がリズではなく、青い鳥なんだと気づいたときの演奏が半端ない。
素人が聴いても「さっきと全然違う」と感じるし、「繊細で力強い」とも感じる。
あのオーボエの音は確実に脳天をぶち抜かれた。リコーダーすら怪しい自分がオーボエを吹いてみたくなった。
全体的にジブリ作品とも通じる絵本のような世界観と画で夢のようであり現実的でもある幻想的な作品という印象。
とにかく繊細で美しい。
ん〜。やっぱり京アニは刺さるな〜。
なんでか知らないけど、『聲の形』を観てから涙腺が弱くなった気がする。
汚れた心を浄化されたからかな。
だとしからこの『リズと青い鳥』を観たあとは更に涙腺が弱くなるじゃないか!?
ありがたいような困るような…
まぁとにかく今作は文句なしの傑作です!
年がいもなく結構しみました
絵も綺麗、演奏も良い
切なさと温かさを感じる秀作です。
吹奏楽部部員の少女二人が織りなす、友情と微妙なすれ違いを描く物語。
劇場でも鑑賞していますが、その後BS放送を録画したものを再鑑賞。
「響け!ユーフォニアム」のスピンオフですが、単体で鑑賞に堪えうる映画でした。
みぞれの、のぞみに対する愛情に似た友情。それに戸惑うのぞみ。
のぞみの、みぞれに対する嫉妬。その嫉妬の感情に戸惑うのぞみ自身。そしてみぞれ。
決して分かり易い描き方はしていないと思いますが、そんなすれ違いが映画全体、画面全体に描かれていて、心に迫ります。
私は男性で、しかもアラフィフすから、少女の友情について「分かる」とは言えません。寧ろ理解出来ないと思います。
そんな私でも「切なさ」と、「寂しさ」と、「温かさ」を感じることが出来た、とても素晴らしい映画でした。
【京都アニメーション制作作品、初鑑賞作品。その繊細な世界観に一発で魅了された作品である。】。
10代ならぐっときたかなあ
タイガーマスクからリズと青い鳥へ
見終わって、ため息が出た、
日本のアニメーションはどこまで行き着くのだろうか!
かつてのアニメーションはこうだった
①紙芝居の背景の前でペプサートを動かしてみせた「タイガーマスク」
②ぬり絵がしゃべる「サザエさん」
③メッセージ性が最前線に現れつつもその物語の真実性を裏打ちさせるため自然界描写に披写界深度を与えた「もののけ姫」
④ストーリーよりも視界に存在する光景を絵画の手法で極限まで追及する「言の葉の庭」、これは視界にありつつも見ていなかった景色を再発見する試み
そして
⑤形ないものを絵という言語で表した「リズと青い鳥」だ。
京都アニメーションは「聲の形」で“耳の聞こえない少女に聞こえている世界を語らせる”という冒険に挑戦したが今作「リズ~」ではとうとう見えない領域の、そして語らぬ思いの無言の言葉を絵において語らしめるという領域に達してしまった。
日本のアニメはもはや文学のカテゴリーに区分される時代に到達してしまった。
万年筆やキーボードで著される文学ではなくアニメーションによって表現される文学だ。
ボブ・ディランの受賞には驚いたが、いつの日か「ノーベル文学賞」をよもや日本のアニメプロダクションが受賞するのではないかと、そんな気がしてきた。
映像と音楽が素晴らしい
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