劇場公開日 2018年4月21日

「理解できてない馬鹿が多すぎる」リズと青い鳥 ウンコマニアックスさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5理解できてない馬鹿が多すぎる

2018年5月4日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

この映画の本質は原作者や監督等が述べる通り〈“好き”ということの齟齬〉と〈言葉で語られることだけが全てではない〉ということに尽きる

だからこの映画は、ユーフォで描かれたみぞれの葛藤の焼き増しや、ましてや百合や青春やら日常やら10代の心の動きやらそんな表面的なものではなく、ともすれば人間の根本的な営みを揺るがしてしまうかのような意識にさせられる、そんな作品なのである。

希美の“好き”とみぞれの“好き”の意味や性質や感情は全く違っていることは明白であり、あまつさえその言葉が本心に適っているのかも他者には決して知ることがない。そのとき、“好き”という言葉はエゴにも狂気にも、あるいはペテンにも誤魔化しにもなり得るのである。そういったジレンマは言葉があまりに弱く複雑で不完全であるからであるが、しかし人間はそれに頼らざるを得ないのである。しかし、言葉だけが全てではないだろう。非言語的表現、そして音楽。この映画ではそういったセリフのないシーンは極めて重要な意味合いを持ち、そして極めて雄弁に(そして残酷に)語るのである。

これはいささか拡大解釈的かもしれないが、この作品の根幹にある上記の命題を理解できない人間はおそらく文学を必要としないようなウラヤマシイ人間か、よっぽど鈍感な人間なのだろう。

ウンコマニアックス