「桜井ユキの可愛さに誤魔化される。」真っ赤な星 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
桜井ユキの可愛さに誤魔化される。
易い哲学、無理に捏ね繰りだした屁理屈、間違った視点の社会問題、偏ったイデオロギー、純粋な私小説。映画に限らず、そういうやつが好きじゃないです。最近やたら目に付いてウンザリしてます。井樫彩さんと言う監督さんの事は何も知らないけど、少なくとも「嫌いなものリスト」の要素は見当たらなかった。かなぁと思いました。
14歳の少女の孤独と依存心と独占欲が、27歳の「消えてしまいたい」と思っているオンナに伝染し、共依存性を生み出す物語。
とにかく、出て来る男がクズ、クズ、クズ。避妊せず買春。しかもクルマの中。14歳の女の子に手ぇ付けるは、妻子ある身で不倫して、不倫相手に「お前が一番」とか言うわ。世の女性に言っておきますが、こんなクズばっかりじゃありませんから、あなた方の住む世界。早まってはいけませんし、諦めてもいけません。しかし、何でこんなクズしか出て来ないかなぁ。監督、何か悪いモノでも食いましたか?過去に。
冒頭シーンの桜井ユキが愛おしい。これね、男の中の色んなものを爆発させます。単純な性衝動以外の、いろんなもの。説明すると長くなるので省略するけど。この時点で「弥生ちゃんが好き」になってしまう少女の気持ち、わかる。
弥生ちゃんは厭世ビッチの寂しんぼう。もうね、グレグレにぐれちゃってます。ついでにグショグショビッチ。自分の身体を傷つけると、心の傷は浅くなって行く。多分、そんな感じなんだと思う。似たような経験は実は誰にもあると思います。どこから、何時から、陽への愛が膨らみ始めたのかは判らないけど、からかう様に陽にキスをしてグショグショの自分に触れさせた夜、かなぁ。あのシーンのエロさと来たら。暗い中で声だけだなんて。
結構、痛々しく生々しい描写が続きます。「岬の」の嘔吐してしまいそうな生々しさは俺には辛かった。このくらいが丁度良いと思う。時間の流れは緩やかで、「早い展開中毒」のTV慣れした日本では共感してくれない人の方が多いでしょうが、俺は好きです。最近、このユルユルなタイム感に、はまってるかも知れない。
画の作りも、後半戦は良いなぁ、と思うシーンが幾つかありました。陽が階段の外廊下で弥生ちゃんを待つシーンをアパート真正面からとらえた、なんでもない画の構図。閉鎖状態の天文台に忍び込みドームを開く場面。銭湯で陽の背中にキスマークを付けるシーン。水中の陽と弥生。などなど。結構、好きかも知れない。
偏った人物設定に、作者の内省的に過ぎる感性が反映されてる気がして、ちょっとだけ鼻につくんですが、桜井ユキに誤魔化されたと思う。普通の男と女の成婚ストーリーなんかを撮ってくれたら、ある意味面白いと思う。監督さん、拒否反応出るでしょう。それを乗り越えて撮るハッピーエンドって、甘苦で具合良さそうな気がするから。