「秀逸な邦題」女は二度決断する ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
秀逸な邦題
ネオナチに家族を殺された白人女性の物語。司法でさばけない変わりに彼女がくだす決断が賛否を呼ぶ作品だろうし、監督もそれを狙っているのだろう。しかし、ただの復讐ものかというとそうではない。
シンプルな復讐劇なら、「二度」の決断は必要ない。推定無罪の原則の限界を感じる主人公がただネオナチを殺せばよかった。反対に葛藤の末、赦す展開だったらどうだろうか。行儀の良い話にはなるだろう。しかし現実は赦しに満ちていない。この映画は、二度の決断があるから非凡なものになった。一度目と二度目の決断の間の「逡巡」には、単純な怒りだけでも、寛容な赦しとも言えない大変に複雑な感情が宿っている。
一度目の決断を翻す瞬間のカットは、脚本段階にはなく、撮影中の偶然を利用したそうだ。その後台詞のない主人公の逡巡が続く。この逡巡の後の二度目の決断は一度目とは変化している。
その変化になにを見るか。新聞記事や論説のように割り切れない感情がこの映画には溢れている。その感情を無視しては、世界の問題の何も解決できないだろう。
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