顔たち、ところどころのレビュー・感想・評価
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二人の生み出す表現のタッチにゾクゾクさせられる
ヌーヴェル・ヴァーグの立役者の一人、アニエス・ヴァルダが、JRという名のアーティストと共に旅を続ける。たったそれだけのプロットなのに、いつしか底知れぬ創造性に満ちたドキュメンタリーへと進化していくところにこの映画の、いやこの二人だからこその自然体の“凄さ”がある。
彼らが乗り込むのはカメラの形をしたトラック。訪れる先で人と会い、言葉を交わし、写真を撮る。何度も繰り返されるこの儀式のようなやり取りがやがて一つ一つのインスタレーションとなって提示されていく過程に、誰もがゾクゾクするほどのダイナミズムを感じるはず。
そこには人の生き様がしっかりと刻まれ、土地の記憶が刻まれ、そして人々が向かうべき未来さえも刻印されているような気がする。こうした表現をヒョイヒョイと形にしていく二人はやはり超絶的に凄い。ヌーヴェル・ヴァーグ世代にとってボーナスステージのようなクライマックスもなんだかとても素敵だ。
【歳が離れた二人のアーティストが出会った、人の様々な顔。人生の年輪が刻まれた顔は、その人が生きて来た人生を語るのである。何とも、豊饒な気持ちになる、ロードムービースタイルのドキュメンタリーである。】
ー 今作は、”ヌーヴェルヴァーグの祖母”と呼ばれる、当時88歳のアニエス・ヴァルダと新進気鋭の人々のポートレートを大きく壁面などに貼りだす33歳のアーティストJRの二人が、フランスの田舎町を共に旅しながら、その街に住む人々の顔を写し、建物の壁面に貼るロードムービーの様なスタイルを取ったドキュメンタリー映画である。ー
◆感想
・アーティスティックな思想を持つ、お祖母ちゃんと孫が一緒に旅をするドキュメンタリーの様な作品である。
・だが、二人ともアーティストであるから、妥協はしない。
・二人が会う、フランスの田舎街に住む人々の顔が、とても良い。年輪の様な皺を刻んだ、顔、顔、顔。JRは彼らの姿を写し、大きな写真に引き伸ばし、彼らが住む町の建物や納屋の壁面に張り付ける。
港湾労働者の妻3人、山羊の角を切らずに飼育する要牧者・・。
ー 人々の反応は様々だが、皆、嬉しそうである。自分の顔や全身が、自分が住む街に大きく、貼りだされる、嬉しさと恥ずかしさと・・。ー
・二人の旅は、”計画しない”ことで、続いて行く。
<アニエス・ヴァルダが、JRへのお礼に連れて行った、ゴダールの家。だが、彼は”敢えて”合わず・・。意気消沈するアニエスに、それまでJRが頑なに取る事を拒否していた黒いサングラスを取り、アニエスに自らの瞳を見せるシーン。
何とも、豊饒な気持ちになる、ロードムービースタイルのドキュメンタリーである。>
アニエスとJRならではの創造の旅
視力が衰えつつある80歳超の映画監督アニエス・ヴァルダと孫のような若さのストリートアーチストJRが、思いつきで目的地を決めて赴き、土地の人と触れ合い、お互いの創造力を働かせつつ大きな作品を制作し撮って行く。
広大な農地を黙々とトラクターで往復する農夫。全身を使って見事な鐘をつく鐘楼守。仙人のように暮らす芸術家。港湾で働く労働者の妻達を沢山のコンテナを積み上げた中に立たせた巨大な作品。などなど。
最も印象的だったのは、忘れられた炭鉱の町に住み続ける女性の涙だ。亡き夫達への思い出が報われたような。
そして、決してサングラスを外さないJRが、気落ちするアニエスを励ますために素顔を見せた様子にも感動した。
アニエスさんが、どんな人かだったり、アニエスさんのパートナー、ジャ...
本で欲しい
一見、市井の人々が画面に写りドキュメンタリーかと勘違いしてしまうが...
一見、市井の人々が画面に写りドキュメンタリーかと勘違いしてしまうが、これは劇映画だ。処女作「ラ・ポワント・クールト」と同じどころか更にフィクションとリアルが溶けてしまっている。彼女はゴダールにお願いしたのではないか?そう疑ってしまう素晴らしい最後。
アニエスたんかわええ。
人間の魅力を映し出す
とにかく尊敬
88歳と33歳のほのぼのコラボ
素敵な映画だった〜
とても心が温かくなった
88歳の映画監督アニエス・ヴァルダと、33歳のカメラマンJRが二人でフランスを旅する姿をとらえたドキュメンタリー映画
その中で、彼らは出会った人たちから話を聞き、JRが彼らの写真を撮り、大きく引き伸ばして街の建造物に張り出し、街の人々の反応を見る
この映画は、そんなアニエスとJRのコラボの記録だ
彼らが行く場所は、特にこれといった名所や、観光地のない普通の田舎町
けれど、そんな田舎町にも、その街を語る歴史があり、その街で育った人の顔に、その歴史が刻まれる
アニエスは、そんな街の人々からその街と、その人の歴史を聞き
JRは、彼らの表情を捉え、その街を象徴する建物に彼らの写真を貼り出す
その写真が映し出すのは、ポーズをとった一瞬だけれど、その表情と、彼が張り出した建物には、長い歴史が刻まれている
人と建物が合わさって、その街の顔が浮かび上がる
そうして、この映画には、いろんな街の顔が描かれていく
それを見て、写真というのは、決してその一瞬だけではなく、長い長い歴史を語るものなんだなと思った
アニエスが88歳、JRが33歳で、おばあちゃんと孫のような関係で
JRはとてもアニエスのことを敬っていて、仲の良い二人を観ていると、それだけで心が温かくなった
けれど、仕事になると、二人の関係は対等で、共にアイディアを出し合って作品を作り上げているところが、プロのコラボという感じがして良い
二人が選んだ街は、かつてアニエスが訪れた街もあって、
アニエスは、若い人と仕事をしながら、自分自身の歴史も誰かに引き継いでおきたかったのかなぁと思った
それが、映画監督ではなく、カメラマンというところが、アートに境界なしという感じがして良かった
全体的にとてもほのぼのとしていて、心が温かくなるし、無性に旅に行きたくなるドキュメンタリーだった
けれど、気まぐれゴダールのエピソードは、なんとも言えず切なくなってしまった
そのつかみどころのなさが、ゴダールなのかもしれないけれど
ドデカイカメラの車が凄くて斬新!
唯一無二
オープニングの絵と音で完全に心を持っていかれた気がする。
とにかく非常に楽しい作品で、ヴァルダとJRがどこへ行っているのか分からないしどういう意図をもってアートな活動を繰り広げているのかほとんど分からないけれど、ビジュアルの強さだけで笑ってしまうし感動すら覚える。
ドキュメンタリーという手法を借りた劇映画、あるいはその逆、そういう独特の作風はまさにヴァルダそのものであり、唯一無二。作為的でありながらそれ故にそこにある本質の面白さを垣間見る。
JRの写真、ヴァルダの生き様、全く共通点が2つの事柄が無理なくナチュラルに絡み合う。そしてそこで生まれる笑いと感動─。ラストはどこまでが本当なのか全く分からなかったけれど、嘘でも本当でも泣き笑える。
お顔越え行こうよ (Visages Villages)
アートが人を元気にする
アート×ロードムービー。
映画監督のアニエス・バルダと現代アーティストのJRの2人が旅をしながら、その土地で出会った人々とアート作品を制作する様子を収めたドキュメンタリー。
制作する作品の多くは、土地の人をカメラで撮影し、巨大にプリントアウトして、それを壁などに貼るというインスタレーション。
その土地で出会う人の人生、その土地の歴史を作品に込めるから、人々は笑顔になる。
越後妻有のトリエンナーレや瀬戸内芸術祭など、日本でも現代アートが地方を元気にする事例が生まれているが、きっと同じような文脈なのだろう。
アニエス・バルダは、すっかりおばあちゃんで、JRはお年寄りに優しい。そんな2人のやりとりも微笑ましいです。
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