夏の娘たち ひめごとのレビュー・感想・評価
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あっけらかんな横溝正史
山間の村の狭い地域での倫理観もへったくれもない爛れた親子関係を、でもサラリと無味乾燥的なイメージで、時折ギャグも入れながら淡々と主人公の生き様を描く作品。
別の視点ならば、その近親相姦な関係に嫌悪感を持ってしまうのだが、それは単に都会で意味のない倫理観に蝕まれた近視眼のせいであり、閉ざされた世界では逆にその関係がより強固な体制を築いていくという外からの防御を作り上げているメリットも考えられることも言える。そういった丸でエロ漫画のようなシチュエーションの中でのドライで移り気な人生観を醸し出す内容である。
主人公の女性の思考はあまり褒められたモノではないが、却ってその自由で欲望に従順な態度に『ニンフ』をオーバーラップさせる。そして振り回される、血の繋がっているのかどうか分からない弟。セックスはできるのだが、自分のモノにはならないもどかしさ。
色々あって、結局別の男と結婚するのだが、それを苦にしての弟の自殺、でも結婚は予定通り行うなんて流れは流石に、置いてけぼり感は拭えないが、監督の今までのメタモグラフィを追っていくと合点がいく。ポルノ映画、ライトノベル映画化、そして閑村のドキュメンタリーと、その集大成がこの作品に込められているのだろうと伝わる。もっと丁寧に描いてくれたらと思うのだが、しかし逆にその不親切な演出やカット割り、丸で運動会を撮る父親のようなド素人のパンの演出を食らう度、素朴だけどメッセージ性のあるストーリー展開に惹き込まれる。シチュエーションの濃さとの真逆な心情の機微、そのコントラストが頭をユワンユワンと揺さぶる作品であった。だが、この面白さは決して人に伝えられない。なぜならばそのボキャブラリーを持ち併せていないから・・・非常に恥じることである。
追伸
今監督の堀禎一氏が、奇しくも自分が鑑賞した18日午前にくも膜下出血のため東京都新宿区の病院で死去されたとのこと。
注目していた監督であり、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
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