劇場公開日 2018年4月27日

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となりの怪物くん : インタビュー

2018年5月1日更新
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映画賞総なめ男・菅田将暉、月川翔監督と初タッグ「『となりの怪物くん』はニューヒーロー」

累計発行部数610万部突破の人気コミック(原作・ろびこ)を、菅田将暉&土屋太鳳のW主演で実写映画化した「となりの怪物くん」。友達よりも勉強第一の冷血女子の雫(土屋)と異端の天才児・春(菅田)の青春恋愛ストーリーだ。主演作「キセキ ―あの日のソビト」「帝一の國」「あゝ、荒野」「火花」で2017年の映画賞を総なめにした菅田が、興収32億円以上の大ヒット映画「君の膵臓をたべたい」の月川翔監督と組み、少女コミック原作の映画化という新ジャンルに挑んだ。今、ノリにノッている2人に話を聞いた。(取材・文/平辻哲也、写真/江藤海彦)

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イケメン、俊敏で怪力、そして、生まれながらにして高い知性を持ちながら、独特の価値観から常に問題行動を起こし、友達ゼロの春。家庭環境が原因で、人生に大切なのは友情よりも学歴と信じるガリ勉の冷血女子・雫。そんな2人がふとしたことから知り合い、いつしか個性的な友達を増やしながら、恋に落ち、それぞれの家族の問題に直面しながらも、忘れられない高校生活を送っていく姿を描く。

映画賞レースを制した菅田が、2018年のスタートを切るのが本作だ。「“とな怪”の公開直前に、(数々の映画賞を)取るとは思わなかったですけども、ありがたいと同時に、裏切れないものをもらったな、という思いがあります。ちょっとした使命感みたいなものを感じていますね。渋谷にはいっぱい人いるのに、映画館に行くと、スカスカ。そういうのを見ちゃうと、危機感を感じます。自分も、高校生の時にそんなには映画を見に行かなかったけれども、人に伝えていく作業を怠ってはいけないな、と感じています」と賞の重みを感じている。

“キミスイ”の月川監督との初タッグについては、「(「銀魂」で共演した)小栗(旬)さんをはじめ、いろんな方からよい評判を聞いていました。初めてのジャンルで、そこで一緒に戦っていきましょうというのが楽しかった」と話す。一方の月川監督も「ずっと菅田君とやりたいと思っていたので、キャストを聞いて『やります!』と即答しました」。キャラクター作りは、衣装合わせの時のシューズ選びから徐々に作り上げていった。

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映画の冒頭は、高校の入学式当日、春が校舎から駐車場の車の屋根に飛び降り、上級生を叩きのめす、アメコミのヒーローのようなアクションシーンから始まる。「単に身体能力がすごい、というだけでは分かりにくいかもしれないから、(監督は)ここにいたかと思えば、急に別の場所に現れるみたいなことを考えてくださった」と菅田。登場人物のそれぞれが個性的なことから、“青春版アベンジャーズ”だといった表現をしているが、春の動きを見ると、「X-MEN」のウルヴァリンのようでもある。そんな感想を伝えると、菅田は「じゃあ、俺はヒュー・ジャックマンか」と笑う。

月川監督は「リアリティのラインをどこにするかを話し合ってきました。ちょっとフィクション度の高いファンタジーの世界にしていこうか、という中で、現実離れした動きもできる設定しました」。ロケーションも、高校は富山にある豪奢な中高一貫の高校、港を臨む神戸、セットのバッティングセンターなどを選び、どこか現実離れした空間を作り上げ、高校の制服も真っ赤なブレザーを選ぶなど独特な世界を生み出している。

身振り手振りやアクションは強調している部分もある。それがこの作品の魅力でもあり、生命線である。「人によっては、『どうした、菅田将暉?』と思う人もいるかもしれない。だけども、それが後々、効いてくればいいかなと思いました。やりすぎだろうと、そこには、(雫と春の)『いい思い出』がいっぱい残っているはずなんです。“春といると、死ぬほど疲れるけども、思い出すだけで楽しい”という雫のセリフがあるのですが、これを、勉強だけに青春を捧げてしまっていた女の子に言わせる、というのが、使命だったんだなと映画を見て改めて思いました」と菅田は語る。

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月川監督も、「台本には『春のいない○○』というのがあるんですが、それには春がいた印象が強くないとダメなんです。動きも大きくやってくれて、雫の記憶に残る春でいてくれたな、という感じがしました。いた時をはっきり思い出せる。お客さんも、雫と同じように思い出せる。そこがうまくいった」と菅田の演技を讃えた。

原作コミックを読んだ菅田は、「面白い」と思った一方、どこか悲しさも感じたという。「春って、そんなに珍しい子かなと思ったんです。個性があったり、人並みはずれている人たちが疎外されている理由が分からなかったんです。僕もけして自己主張が強い方ではないし、周りに合わせてしまうところもあります。春はニュー・ヒーローのような感じがしたんです」

苦労したのは、物語の序盤、雫がぽろぽろ涙を流す春を抱きしめて、「大丈夫だよ、今に春の周りにはたくさんの人であふれるから」というシーン。「漫画で、このシーンを読んだ時に春をやりたいなと思ったんです。漫画での名シーンでもあり、一番悩みましたね。映画ですから、省略するところが出てくるんだけども、あのシーンによって、昇華できると思ったんです。でも、いまだにこれでよかったのかどうか、分からないですが…」と菅田。

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月川監督は「ここで泣けるものかなと思っていたんですが、やってみたら、ポロポロと涙が出てくるんですね。『すげえな』と思って見ていました。終わってから、『よく出来たね』と言ったら、『彼女(土屋)が雫でいてくれたから、(涙が)出ましたね』と言うんです。2人で役を掴んでいるなという感じがしました」と話す。回想形式にして、全13巻からなるコミックの名シーンを数多く拾い出している同作だが、いきなり泣ける、いい場面となった。

菅田は「ちっちゃい太鳳ちゃん(155センチ)が大きく見えて、聖母マリアさまのようでした。簡単に言うと、春は寂しかったんです。そんな中で、自分でここまで食らいついてくれる人がいて、うれしかったんです。卵から孵ったヒナが最初に目にしたものについていくような感じだったんだと思いますね」と振り返る。神戸の町を見下ろす丘で撮影したシークエンスは全て、好きだという。

今年2月で25歳の菅田。劇中では高校1年を演じたが、「もう10年前ですね。高校2年の時に上京したので、1年くらいしか高校生らしい生活を送っていないので、その続きをやっているわけでもないけども、少しそんな感じもあります。いい思い出が作れたな、と。高校時代って、毎日が大事件なんです。だって、かき氷を食べて、頭が痛くなって、笑うシーンも撮影だったら、出来るんですよ」と、劇中の春のような天真爛漫な笑顔を見せた。

「君の膵臓をたべたい」「黒崎くんの言いなりになんてならない」など高校生が主人公の作品を数多く手がける月川監督も「高校1、2年までは人と交わらず、本ばかりを読んでいる感じだったので、寂しかった彼らの気持ちも分かるし、高校3年生の時には演劇を作って、これは楽しいと思いましたので、主人公たちが鳥小屋を作るだけで、楽しいとか、そういう感覚は分かります。今、映画で追体験している感じかもしれないです」と話していた。

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