「グッバイ、サマーと比べると…」50年後のボクたちは kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
グッバイ、サマーと比べると…
昨年のちょうど同じ時期に公開されたフランス映画『グッバイ、サマー』と驚くほど同じ設定の本作。思春期男子のロードムービーは夏の終わりに観るものなのだろうか。
丁寧でナイーブ、ほろ苦い作風だった『グッバイ、サマー』に比べて、本作はカラッとしており、大味で雑。
それでいて物語はどことなくモッサリしており、映画からはヤケクソなエネルギーも感じられず、なんか不完全燃焼感がぬぐえない。車を盗んで無計画に突っ走るんだから、映画全体にもっとグルーヴ感が欲しいところ。つまらなくはないけど、佳作とも言い切れな微妙なレベルの作品だったな、との印象です。『グッバイ、サマー』と比べると、クオリティ的にかなり落ちると思います。
その理由は、人物描写が全般的に大雑把であること。
主人公のチックは、ゲイでアジア人で天才でアル中と、ある意味マイノリティーのイメージを凝縮したようなキャラで、かなりToo Muchです。設定盛り過ぎ。しかも背景がまったく描かれないので、何が彼たらしめているのかがよくわからないため、キャラに入り込めず。ゲイの葛藤については、序盤の「お前ゲイか?」と言った罵りから窺い知れてはいましたが。
また、イザはなかなか魅力的なのに、チックと同様に何者なのかが窺い知れない。まー、孤独だ、とかはわかるけどさ。そこから一歩踏み込んだ何かが欲しい。
せっかくみんなキャラ立っているのに、上記の理由で物語に没入できない。そこが最大の不満点でした。
一方、主人公で語り手だけありマイクの描写はバッチリで、ちゃんと成長しており良かった。裁判所でクソ親父の意見を振り切り、自分の意志を主張したシーンはカッコ良かった。ラストは面構えもドスが効いてきましたし。
そしてスカジャン。黒ではなくグリーンというのが粋です。オーバーサイズなのも逆に良い。小柄なマイクがイキって着てる雰囲気が出ていてキュートでした。ドイツ映画でスカジャン(Japan の刺繍入り!)を見れたのは、スカジャニストとして単純に嬉しく、とても誇らしい気分です。