「【”死と生と性”葬式とは故人の家族の人生、人間関係の縮図が垣間見える場であり、今作は祖父の死を経験した女性が、新たな人生の一歩を踏み出す、滑稽だからこそ愛しい家族の姿を描いた物語なのである。】」おじいちゃん、死んじゃったって。 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”死と生と性”葬式とは故人の家族の人生、人間関係の縮図が垣間見える場であり、今作は祖父の死を経験した女性が、新たな人生の一歩を踏み出す、滑稽だからこそ愛しい家族の姿を描いた物語なのである。】
ー 森ガキ侑大の長編映画初監督作であり、現代邦画を牽引する女優、岸井ゆきのさん初主演作である。-
■彼氏とのセックスの最中に祖父の訃報の電話を受けた春野吉子(岸井ゆきの)。そのことにぼんやりとした罪悪感を抱きながらも葬儀の準備は進んでいく。
久しぶりに集まった家族たちも何だか悲しそうではなく、葬儀が進むにつれ、それぞれのやっかいな事情が表面化していく。
◆感想
・葬儀とは、久しく会っていない親戚と会う場である。最初はお互いにぎこちないし、”あれ、誰だっけ・・”とかどこの誰は出世したとか、一流大学に入ったとか、噂話がひそひそと飛び交う場でもある。
・けれども、今作でも描かれているように、短い時間だが昔話に花が咲き、いつの間にか安らげる場になっていたりする。
・今作では、家族だからこそ離れられないもどかしさと、ぶつかってもつながっていられる安心を見る者に実に上手く見せている。
・頭髪の薄さを気にする長兄を演じた岩松了と早期退社した次兄を演じた光石研が、やたらと言い合い、喧嘩をしても酒を呑んだら、コロッと寝てしまい、翌日“昨日は済まなかった・・”と謝ったり、
長兄と別れた妻(美保純)が、私は”葬儀には関係ない”と言っていた事に対し、父に反発していた娘が”お母さん、関係なくなはいよ”ときっぱり言い切ったり。
・次兄がボケてしまったお婆さんを施設に入れる話をしている時に、次兄の嫁が”お義母さんは、貴方たちバカ息子を立派に育てたんじゃない!”と啖呵を切るシーンなど、佳きシーンが多数ある。
・お金持ちだが、独身の叔母(水野美紀)が、吉子の懸ける言葉も良い。
<ラスト、旅行業者に勤める吉子がインドのガンジス川のバラナシを訪れ、”何だ、死体ゴロゴロしてないじゃない・・”と言うシーンも良い。インドのバラナシでは人々が毎朝沐浴する横で、死者が川に流されるのである。
”死と生”は隣り合ったモノであり、今作は祖父の死を経験した女性が、新たな人生の一歩を踏み出す物語であり、滑稽だからこそ、愛しい家族の姿を描いた物語なのである。>