「学園祭における知念侑李と中川大志によるジャズセッションの演出の妙と演奏の素晴らしさに感動させられた」坂道のアポロン Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
学園祭における知念侑李と中川大志によるジャズセッションの演出の妙と演奏の素晴らしさに感動させられた
三木孝浩による2018年製作の日本映画。配給は東宝、アスミック・エース。
三木監督の映画は、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」に続く2作目だが、今回もとても良い映画との印象を持った。
最初の方、知念侑李がピアノを弾いているシーン、指先のアップから切り替え無しで知念の顔へ持ち上がるカメラワークが視聴者の気持ちを汲んでいる様でにくい。ピアノ演奏はどうせ吹き替えでしょうが、あれ自分で弾いてるの?!と印象づけられた。
他にも幾つか、三木監督と小宮山充撮影コンビによる映像は魅力的であった。知念が思わずキスしてしまう神社で少し雨で濡れた小松菜奈の物憂げな表情、停電した体育館でカーテンの隙間から差し込む光で浮き出す知念の楽しそうなピアノ演奏、最後の方の教会ステンドグラスからの逆光の中で浮かぶドラムを叩く中川大志の勇姿、等。
ノスタルジックな風景や演出にも郷愁を覚えた。特に、公衆電話で10円玉を重ねて置いた上で、小松に電話をかけてデートを誘う知念の姿。電話のかたちは違えど、恥ずかしながら自分も高校生の時に覚えが有る行動で懐かしく、監督に親近感を覚えた。
テンポの良いストーリー展開も心地良かった。少女と遊んでいたはずの糸電話での小松菜奈の登場の意外性、そして知念の恋心の告白。何より、学園祭での喧嘩別れした中川参加のロック演奏から、停電による知念の場繋ぎ目的としてのピアノ演奏、そこにドラマ中川参加のジャズ演奏共演の流れは見事で、2人の演奏(曲は「My Favorite Things」〜「Moanin’」)予想外の素晴らしさもあって感動してしまった。成る程、ロックは弱いが、ジャズは停電に強いか。
俳優のたち演技もとても良かった。アイドルGとしての知念侑李は全く知らなかったが、医師となる優等生を見事に体現していた。未経験から楽譜読めないまま半年の猛練習で身につけたというハイレベルのピアノ演奏には、何年も弾いていても上達が乏しい自分との比較で、唖然とさせられた。中川大志演ずる喧嘩早いが心優しい不良も良かった。中学のころ交流があった大柄な不良学生への憧れの様な気持ちを思い出した。ドラム演奏も悪くなかった。ただ、エンドタイトルにドラム演奏者名あったので、一部は吹き替え?。
小松菜奈、予想外に脇役的な設定で多少驚いたが、相変わらず表情の作り方が実に上手い。ラストの方、知念と2人で中川の居る教会へ向かう時に見せた彼女の表情の動き(知念への愛を再認識した上での行動決意をした様に思えた)には魅せられてしまった。ただ最後、歌位出す直前で、ストップモーションになってしまったが、My favorite thingsを歌う姿も見たかった。
そして、大河ドラマ五代友厚役で初めて知ったディーン・フジオカ、難しいはずの中川が憧れるカッコ良い役を見事に演じ、更に素晴らしいジャズ・トランペット演奏と歌唱(曲はチェット・ベイカー演奏・歌唱で有名な「But Not For Me」)を見せつけられて、そのマルチタレントぶりに驚愕させられた。
原作小玉ユキ、脚本高橋泉。エグゼクティブプロデューサー豊島雅郎 、上田太地、プロデューサー八尾香澄、田辺圭吾、 岡本順哉、ラインプロデューサー森徹。
撮影小宮山充、照明保坂温、録音矢野正人、美術花谷秀文、装飾鈴木仁、スタイリスト望月恵、ヘアメイクプランニング池田真希。VFX菅原悦史、音響効果伊藤瑞樹、スクリプター
古保美友紀、編集穗垣順之助、音楽鈴木正人、音楽プロデューサー安井輝。主題歌小田和正
助監督を見せる成瀬朋一、制作担当藤野尚美。
出演、知念侑李(西見薫)、中川大志(川渕千太郎)、小松菜奈(迎律子)、真野恵里菜(深堀百合香)、山下容莉枝(伯母)、松村北斗(松岡星児)、野間口徹(千太郎の父)、
中村梅雀(迎勉)、ディーン・フジオカ(桂木淳一)。
多分、中川大志のドラムはかなりの腕前だと思います。
音はさすがにプロの音でしたが、リズムセクションはごまかしがきかない。そのままでもかなり上手い!と感じました。
いきなりのセッションで心を通じ合えるとか、三木孝浩監督は音楽映画をかなり観ているんでしょうね~