「音楽はやっぱり良い」坂道のアポロン こんのさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽はやっぱり良い
劇場を出た後に「いい時間を過ごせたな」と思える映画でした。
『疲れて何も考えたくないけど、なにか映画が観たい』という人にもおすすめしたい。
良質な音楽と佐世保の風景が、心地よく物語の世界に連れていってくれます。
近年の流行と言うか、注目を集めるのに有効な手段として、特にCMなどではミュージカル調やビッグバンド系のショーの要素を取り入れることが多いですが、この作品一番の盛り上がりはなんと言ってもピアノとドラム、2人だけの演奏です。
"青春を描く音楽物の邦画"と聞けば、普通は『みんなでコンクールを目指すぞ!』とか『このバンドを成功させるぞ!』というゴールに向かっていくことになるかと思いますが、坂道のアポロンはゴールを目指さない。
ただただ友情のために音楽を鳴らしていきます。
そのうえ山場のシーンは2人の為の、2人のセッション。
でも不思議なんですよ。ビッグバンドに慣れた耳でもまったく寂しく感じません。
ジャズという音楽の特性か、音の遊び、アドリブ・ソロのぶつかり合い。
むしろ華やかなんです。
また手元だけ別人と言うこともないので、我に返らずに済むのは本当にありがたい。
4分33秒* の演奏の間、完全に演奏者2人(薫と千太郎)だけの世界に入ってしまっているのに、観ていて置いてけぼり感もありません。
それは主人公組3人のうちの誰かに、自然と感情移入出来るからでしょう。
ラストのおかげで「ああ、終わってしまった」という落ち込みもないんですよね。
後味がいいから何回でも観たくなる。監督はそこを狙ったんでしょうか?(笑)
残念ながら現段階では興収が振るわないようなので、気になっている方は絶対早めの観賞をオススメします!初見がDVDではあまりに勿体ないですよ。是非映画館のスクリーン、音響で。
( *= 演奏時間はサウンドトラックを参考にしました)