リュミエール!のレビュー・感想・評価
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映画の始まり
映画の発明はエジソンだがスクリーン上映したのはリュミエール兄弟の方が先だから開祖と言っても良いでしょう。ただ、初期の作品はまさに動く写真、撮るものも動き優先だし、初めてビデオカメラを手にした親のように主に撮りたいのは子供を中心としたファミリービデオ的になることも納得、次第に行事やイベントの記録、ニュース映像的な作品が増えましたね、確かにテレビが普及する以前には映画館で本編上映前にニュース上映していましたからフィルムが記録性としては重要であったことは確かです。
名所旧跡撮影あたりでは構図も絵画的でズームもない固定撮影から、ベネチアの運河撮影では動きが出てきましたね。後半、事故った老人を人形にすり替えるストップトリックシーンは大進歩でしょう。
ただ、紹介される作品はどれも短編で映画と呼べるレベルではありません。むしろ、1898年のイギリス映画「クリスマス」の初の編集技法やSF映画の開祖1902年の「月世界旅行」などの方が映画史的には貴重でしょう。サイレントの短編を108本もただ観せるだけにはいかないから監督自ら解説ナレーションとBGMを加えています、吹き替え版は志らく師匠ですからまさに弁士的、もっともリュミエールがパリのグラン・カフェで1895年に「工場の出口」などを有料上映したときにはピアノの伴奏は付いていたというから驚きです。
フランスの映画産業への功績、リュミエール兄弟の偉業を称えたくてリュミエール研究所員でもあるティエリー・フレモー氏が製作・脚本・監督・ナレーションと力を注いでいましたが、一分足らずの短編を集めただけなのでさほど勉強にはなりませんでした。
「映画とは何か?」の回答が見つかった!
1920年頃からの名作と呼ばれる映画を年代順に観ていこう!と思い立ち、その旅路のスタート地点として本作を選んだ。
結果として、その選択は大正解であった!
「絵画や彫刻の起源を知ることは叶わないかもしれません。でも、映画がどこで始まったのかは明らかです」と、ティエリー・フレモーは言う。
動画を見せる機械ならば、リュミエール兄弟以前にも複数の発明者が存在する。いや、リュミエール兄弟が開発したシネマトグラフも、ただそれだけでは「一度に大勢が鑑賞出来る動画機械」に過ぎないのだ。
1編約50秒のリュミエール作品群には、構図、アングル、演出、喜劇、悲劇、サスペンスなど「どんな話をどのように撮るか」「どう撮れば最良の映像が得られるか」という発想がすべて現れている。映画を通して世界を俯瞰する視点すら、彼らはすでに持っていた。
フレモーはそれらを「映画の言語」と表現したが、なるほど、それこそがまさしく「動画と映画を分けるもの」ではあるまいか?
フレモーの名編集と名解説によって、リュミエール兄弟を「映画の父」と呼ぶべき明確な根拠を得た。
「映画とは何か?」という問いに、私なりの回答が見つかったように思う。
これまでチャップリンやフリッツ・ラング、ジェイムズ・クルーズなど大正時代の作品も多数観てきたが、「リュミエール!」によって得られた知見に照らす事で、また新しい発見が出来た。
映画の歴史が僅か120年程度であると、自分の中で腑に落ちた事も祥報だ。これならば、前半60年分程度については名作と呼ばれる作品や人気の高かった作品に絞って選択していけば映画史を追体験していく事は可能そうだ。
今後の長い旅程に先駆けて、最良の灯りと磁石を与えてくれた本作品。
リュミエール兄弟とティエリー・フレモー監督に敬意と感謝を込めて星5としたい。
【仏蘭西の”映画の父”と呼ばれる、リュミエール兄弟が生み出した、初期短編108本を収めた貴重な作品群を、立川志らくの絶妙なナレーションで魅せる90分のドキュメンタリー作品。】
「映画の父」の映像を存分に堪能。50秒しか映せなかったんですね。こ...
50秒、ワンカット、(ノーファインダー!)の芸術
リュミエールに文句言うことなし
映画の原点に触れる
幸運にも、本編上映ののち監督ティエリー・フレモー氏の舞台挨拶がある東京都写真美術館ホールの回に行くことができました。
「映画の父」と評されるリュミエール兄弟が、10年間に渡り制作した1422本の映画の中から108本を厳選、まとめられたものが本作。長い月日をかけて一枚一枚のフィルムを復元したという超貴重な映像集です。
しかも監督自ら映画のナレーションも務めていて、各作品の背景や見所、撮影技法などを作中で詳しく解説してくれます。これで大事なところを見落とす心配もありません。
監督の解説のおかげで、彼らの作品は「アート」だという言葉の意味を、存分に感じ取ることができました。
ファインダーもなくどう映っているかその場で確認できないのに、完璧な構図でしっかり50秒に収めていて、しかも現在にも通ずる様々な撮影技法を、彼らは作り出してしまいました。
恥ずかしい話、今までは構図に注意を向けて映画を観たことがなかったのですが、今回リュミエール兄弟の映画を観て、画面構図から作り手の意図を探る面白さに目覚めました。今後、間違いなく映画の見方が変わると思います。
また、歴史的価値が非常に高い、守っていくべき宝であるとも感じました。
選び抜かれた108本でさえもテーマが多岐に渡り、当時の急激な時代変遷を物語っています。かたや川で洗濯、かたやエッフェル塔のエレベーターからの眺め。かたや馬車での旅立ち、かたや巨大船の進水式。新旧入り交じる様々な世界が描かれ、たった10年の間に時代が激しく移り変わっていったことがみてとれます。
特に印象的だったのは、大きな道路で馬車と車(バス?)が同時に行き交うシーン。別々の時代に存在していたと思っていた馬車と車が、ひとつの時代に共存していたという事実を知りました。馬車が動く姿は、映画などの作られたものでしか観たことがなかったので、演技ではなく、実際にひとやものを載せて運んでいる馬車を観るのは非常に新鮮でした。
そして、当時の人々のリアクションが、今とあまり変わらないということにも驚きました。わざとうしろへのけぞって茶化したり、手をたたいて笑ったり、など。演出の場面もありますが、当時のありのままの生活場面が切り取られているシーンが数多くあり、100年前の世界なんて本や写真だけでみる遠い世界と思っていたものが、ぐっと身近に感じられた90分でした。
エジソンもリュミエール兄弟より前に映画を観られる機械を発明したが、それは一人だけが穴から覗いて映画を観られるものだったのに対し、リュミエール兄弟が発明したシネマトグラフは、大勢のひとが同時に映画を観られるものだった、という解説にも納得。
是非、大人だけでなく、義務教育下で全ての学生に観てもらいたい作品です。
これから観る映画を100倍楽しくしてくれる映画
映画の持つ魅力の全てが、最初からそこにあったことを教えてくれる映画でした。
リュミエールの作品は5本しか観ていなかったのですが、何故だかわからないけど昔から惹きつけられるものがあり…。
108本も纏めて観られるということだったので、日本での公開を楽しみにしていました。
ところが本作は、ただリュミエール作品を纏めただけの映画ではなく、リュミエールの魅力を具体的に解説してくれる映画なのでした!(°▽°)!
それぞれの作品はテーマごとに纏められていて、実例を見ながら解説を聞いているようなもんなので、映画論を読むよりはるかにわかりやすい!(サン=サーンスの音楽も効果的)
結論。
〜リュミエールは単なる発明家ではなく、映像作家であり、真の芸術家なのであった〜
だから、彼らが固定カメラのフレームで切り取った50秒の映像は、意思を持って私たちに語りかけてくるのだということがわかり、長年の謎が解けてスッキリしました。( ^∀^)
しかし、映画の父がリュミエール兄弟で本当に良かった。
彼らのような人達だったから、映画は産声をあげたときから芸術であると同時に、大衆娯楽であり、遠く離れた場所や時間を越えられるドキドキハラハラが詰まったエンターテイメントとして育っていったのだと思いました。
リュミエール兄弟の市井の人を見つめる視線はユーモアと愛に満ちていて、世界中に派遣されたカメラマンもその使命から素晴らしい作品を残します。
とくに村の別れの作品には、涙が止まりませんでした。
決してマニアックな映画ファンだけが観る映画ではなく、少しでも映画が好きな人は全員見るべき!
きっと『リュミエール!』を観る前と観た後とでは、映画の見方が変わっていて、映画を観る楽しさを増やしてくれる、そんな映画でした。
追記:たまたま仕事が休みだったので、初日の舞台挨拶に行けたのですが、
ありったけの勇気を出して、直接フレモー監督に感謝の気持ちを伝えることが出来てとても幸せでした。
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