「愛情しか描かれていない」ロング,ロングバケーション オイラさんの映画レビュー(感想・評価)
愛情しか描かれていない
冒頭いきなりの『it's too late』のイントロに、瞬間ドキッとした。
歌詞の意味はよく理解してなかったけど、虚しさを呟くようでいて優しく包むようなメロディーと歌声に、鳥肌が立っていたよ。
歌詞の意味を考えて、なお観賞後のいま、
エラの『悲しさ・苦悩・愛情・幸福感、その強さ』を表していたんだ…と改めて思う。
終始、愛情に溢れた作品だったな。
『愛情しか描かれていない』と言っても良いくらい。
ジョンの痴呆症による記憶の混乱と、時にそれを受け止められなくなってしまうエラの苛立ちや激昂さえ、『貴く愛おしいモノ』だと突きつけられた感じ。
ただ、それが全くベタベタしていなくて、テンポの良さ、展開や会話のコミカルさが満載なの。
まさか違うよね?と思っていたら、実はその『まさか』のラストだったんだけど、
道中の2人の温かさが、いつの間にかそんな想像を忘れさせいたよ。
だから、エラがジョンに言った『一瞬でもあなたと離れたら生きていけない』という言葉を、愛情表現だとオイラは受け止めていたんだ…けど違ったの。
エラが語ったのは気持ちじゃなくて『事実』だったんだ。
あの身体でも生きていられた理由は、ただひとつ『ジョンと一緒にいるから』なんだと気付かされた。
娘ジェーンに『必ず戻る』と伝えた時の、言葉も間も、意味が大きく違ってくる。
毎夜のスライド観賞にエラが込めた想いも、
『取り戻して欲しい』ではなく『少しでも多くのお土産を持たせてあげたい』っていうものだったんじゃないかな。
2人の姿に自分が何を重ねていたのかも、何度もただただ流れた涙が一体何の涙だったのかも、今のオイラには実はよく解らない。
でも、きっとそれこそが『愛情』なんだろう…っていう気がするんだ。
カタチがあったり説明できたりするモノじゃない。
その深さは計り知れないんだ。