「”旅の終わり”に見せる、2大名優の演技の掛け合い。」ロング,ロングバケーション Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
”旅の終わり”に見せる、2大名優の演技の掛け合い。
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これは今月の掘り出し物。名優ヘレン・ミレン(72歳)とドナルド・サザーランド(82歳)の2大名優が、人生の残り少ない70代の夫婦役を演じる。
妻のエラは、全身に転移した末期がんを抱え、夫ジョンは、進行性のアルツハイマーで時折、自分が分からなくなる。
これ以上の無意味な治療を望まないエラは、自分の死後、ひとり残される認知症の夫が施設に入れられることを案じている。そんな2人がキャンピングカー、"レジャー・シーカー"(←これが原題)に乘って旅に出る。なんと夫の運転で(!)
半世紀もの結婚生活を過ごした2人の絶妙な間合い。サザーランドの認知症の演技と、それを受け流す妻エラとしてのミレンの掛け合い。2人のガチンコ勝負が展開される。
原作はマイケル・ザドゥリアンの小説で、邦題は「旅の終わりに」。こちらのほうが良いタイトルだ。「ロング,ロングバケーション」って、大瀧詠一か!!
原作設定と大きく変えているのは、旅の目的地と夫の職業設定。原作の目的地は、家族の想い出の"ディズニーランド"だが、映画ではジョンは元大学教授で、敬愛するヘミングウェイの家があるフロリダの"キーウェスト"を目指す。
脚本のこの変更点のおかげで、夫の教養の高さと認知症のギャップがしっかりと出ているし、効果的なエピソードとエンディングを作り出すことに成功している。
監督は「人間の値打ち」(2016)や「歓びのトスカーナ」(2017)など、イタリア国内でヒットも記録する名作を数々つくる、名匠パオロ・ビルツィ。
(2018/1/26 /TOHOシネマズ日本橋 /シネスコ/字幕:栗原とみ子)
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