劇場公開日 2018年3月17日

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「☆☆☆☆ 《名選手必ずしも名監督にあらず》 記録が残るアスリートな...」ちはやふる 結び 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0☆☆☆☆ 《名選手必ずしも名監督にあらず》 記録が残るアスリートな...

2018年3月21日
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☆☆☆☆

《名選手必ずしも名監督にあらず》

記録が残るアスリートならば。生涯で成し遂げた成績によって、後世までその偉大さは語り告げられる。
但し、だからと言って必ずしも…なのがモヤモヤするところでも有る。
例え名選手では無かったにせよ、試合に於ける戦略や分析力で、自軍に勝利をもたらす働きをする人物等は、何者にも代え難い存在となる。

競技かるたを題材とした本作品。形は個人戦では有るけれども、団体戦を通してのチームとしての絆の大切さを訴えるのは前作同様。いや!前作以上と言える。
負けたら終わり。3年生は高校生活での公式戦にはもう出られなくなる。
だからこそ、この瞬間に全てを賭ける青春。
その純粋さが胸を打つ。

最終章となる今作品には新たな新キャラクターとして男2人。女2人の計4人登場する。

人知れず想いを抱きながらも、ただ見守るだけ…。
その苦しい胸の内の句と、その想いを余すところなく伝える句。
千年以上も前に詠まれた甲乙つけ難い恋の2句。
これを新たに登場した、女性新キャラの特徴を際立たせる句として。
そしてその2人の想いは、それぞれ太一と新が千早に対する想いとも重なり合ってもいる。
更にこの2つの句を、上の句にて提示されていた【運命戦】に当て嵌め。クライマックスに於いて、観客の心をハラハラとさせるアイテムとして使用する等。その秀逸な設定に唸った。

男性新キャラ2人は、その登場の仕方がどこか似ている。
だが、内面で葛藤する名人の彼に対し。団体戦=個人戦の延長の考え方を持つ新入生の彼。
この新入生の彼は、登場した時には強烈なキャラクターなのですが、徐々にそのキャラクターが薄まって行くのがちょっと勿体無い。
とは言え。彼の登場によって、より団体戦ではチームとしての絆の大切さは強調されている。

そして名人の彼…。

本来は個人の戦いの意識を強く持っている。
そんな誰とも強調出来なかった彼に興味を持つ眉毛君。
胸の奥底に深い悩みを持つ眉毛君の気持ちに気付いたのか?名人の彼は心を開き始め、やがて眉毛君の背中を押す事となる。

人が生きて行く中で、価値の有る生き方とは何だろう?
素晴らしい記録を残す(仕事をこなす)事は価値の有る事には違いない。
でも世の中からは例え知られない存在では有っても、次の世代へ伝統を繋げる事の(後輩等のスキルを上げる役割を)出来る人物こそが真のレジェンドと言える存在となって行く。

上の句は眉毛君の物語。
下の句は眼鏡君の物語。
そして本作品は千早を巡り、眉毛君と眼鏡君との恋愛関係の縺れを縦軸に置き。横軸には、3年生は負けたら終わりの競技かるたの現実とチームの絆と和。そして次世代への継承が伝統を育む為の大切さを描く。

実は鑑賞中にはそれらの新キャラクターと、ストーリー上での関係性に気付きながら。どことなく纏っていない感覚を持ちながらの鑑賞でした。
でもこうしてレビューを書くにあたり、少しずつ作品を思い返して行くと、段々と合点が行く内容だったなあ〜…と思えて来ました。

最後に強調しておきたい人物について。

キャラクターは実に地味。それ程目立つ訳では無い。でもこの作品にとって、決して欠かせ無い人。
それが大江さんだ!

彼女はチームが上手く行かない時には、その柔らかな性格からチームの和の中心にいる。
彼女の存在こそが真にチームの支えになっている。

映画を観た多くの人は、クライマックスでの眼鏡君チームとの死闘が1番の見所になると思います。
しかし私が本作品で1番のクライマックスと思った場面は別に有りました。
それは千早が屋上に1人で居る時に、大江さんが話し掛け、これまでの3年間を振り返る。

もう直ぐ高校生活も終わり卒業してしまう。
今後の進路について2人は話し合うのですが。
その中で大江さんは、この屋上で千早に「かるたをしない?」…と誘われた時の事を話す。
その後の3年間での出来事が、自分にとって実に有意義な時間だったのかを千早に語る。

高校生活は2度と戻らない。
その大事な時間を大切な友人達と過ごせた素晴らしさを、ゆっくりと噛みしめる様に…。

この場面こそが私にとって、本作品での1番のクライマックス場面でした。

3部作の締め括りとしてだけでなく。青春映画の傑作として相応しい作品だったと思います。

2018年3月18 TOHOシネマズ市川コルトンプラザ/スクリーン8

松井の天井直撃ホームラン