劇場公開日 2018年2月3日

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「繰り返される民族紛争」THE PROMISE 君への誓い ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0繰り返される民族紛争

2018年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

タイトルの「THE PROMISE」という意味には、
複雑な思いが込められていることがパンフレットで説明
されています。

映倫区分は「G」で、どなたでも観ることができます。
この映画を製作した人の意図は、アルメニア人虐殺の
凄惨さを一方的に伝えようとしたのではなく、民族紛争
の背景を伝えようとしたところが良いです。
だからこそ、多くの人々に観てほしいと思いました。
どうして民族紛争が起きるのかを考えてみてほしいです。
この映画のテーマは、なぜ、どのようにして、民族紛争が
起きるのかであり、いつでも、誰にでも、どこでも起こり
えるからです。
民族紛争は、予想もできないほど速く展開するため、
事前に意識していないと対応できないと思います。

アルメニア人虐殺の歴史的な事実の究明は進んでいませんが、
以下のことは事実です。
・1915年4月24日、イスタンブールでアルメニア系の
 著名人達が逮捕・追放され、虐殺が始まったこと
・欧米の記者達がオスマン帝国で起きていることを
 自国に伝えていたこと
・米国大使モーゲンソーとオスマン帝国の内務大臣
 タラート・パシャのやりとり
・モーセ山での戦闘
・フランス海軍のフルネ提督が3600人ものアルメニア人を
 救出したこと

ただ、第一次世界大戦についての知識は必要です。

1914年6月28日、ガヴリロ・プリンツィプが、セルビア王国のサラエヴォへの視察に
訪れていたオーストリア=ハンガリーの帝位継承者フランツ・フェルディナント大公
を暗殺しました。
1914年7月28日、オーストリア=ハンガリー帝国がセルビア王国に宣戦布告して
第一次世界大戦が始まりました。

連合国(ロシア帝国、フランス第三共和政、英国及びアイルランド連合王国、米国、日本)
と中央同盟国(ドイツ、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国、ブルガリア王国)
に分かれて行われた戦争になりました。

ロシア帝国とオスマン帝国は敵対関係にあり、国境付近にはアルメニア人が住んでいました。
オスマン帝国は、ロシア帝国が国境付近に住んでいるアルメニア人を利用して、
侵攻してくると考えたようです。
オスマン帝国はイスラム教徒で、アルメニア人はキリスト教徒でした。
オスマン帝国にとってはアルメニア人は脅威であるという恐怖感を利用して、
オスマン帝国はアルメニア人を迫害し、虐殺したというようです。

1918年11月11日、連合国の勝利で終わりました。

同じようなことは繰り返され、民族紛争は続いています。

日本は、中国と尖閣諸島、韓国と竹島、ロシアと北方領土という課題もあり、
いつ民族紛争になるかもしれないという危機感を忘れてはいけません。

引用されるウィリアム・サローヤンの詩がこの映画を物語っています。

世界のいかなる権力が
この民族を消せるのだろう
すべての戦いに負け 組織は崩壊し
文学は読まれず 音楽は聴かれず 祈りは通じず
消し去れるか試してみよ
彼らが笑い 歌い 祈ることがなくなるかを
どこかで彼ら2人が出会えば
新たなアルメニアが生まれるのだ

この映画を製作した人の意図を知りたい人にはパンフレットの
購入をお勧めします。

ノリック007