ローガン・ラッキーのレビュー・感想・評価
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二度見したくなる仕掛けはさすがソダーバーグ流
チームを組んで大仕事をやってのける犯罪のプロたちをオールスターキャストで華麗に描いた「オーシャンズ」シリーズと比較されることの多い本作。だが一見して明らかに違うのは、今回徒党を組む面々のポンコツ感、ダメダメ感だ。チャニング・テイタムとアダム・ドライバーが演じるローガン兄弟は大ケガや戦傷のせいで人生下り坂。タイトルとは真逆のアンラッキーな二人とその妹、しゃれたスパイよりガテン系の悪党のほうがよほど似合うダニエル・クレイグが扮する爆破の専門家(プロと呼べるのはこの男だけ)と頭のネジが緩そうな弟二人で、人気カーレースの当日に会場の金庫から大金を奪うというのだから、観ている方は笑ったり呆れたりしながら、おいおい大丈夫か、しっかりしろとつい応援したくなる。
あっと驚く結末を知った後はきっと最初から見直したくなるはず。ソダーバーグ監督の復帰作、大ヒットして続編、3作目とシリーズ化されることに期待。
なぜまた「カントリーロード」?と思っていたら・・・
『エイリアン:コヴェナント』と同じ冒頭文。今年(2017年)2回目の「カントリーロード」がメインで使われるのも偶然かなと頭を働かせていると、なんとその『エイリアン:コヴェナント』の主役でもあるキャサリン・ウォーターストンが出演している!その歌詞にもあるウェスト・バージニア州がメインとなる作品です。
鉱山で働くジミー・ローガン(チャニング・テイタム)は足が悪いという理由で理不尽にも解雇される。弟のクライド(アダム・ドライヴァー)は戦争で左手を失うという不幸に見舞われるが、なんとかバーテンダーとして働いている。“呪われたローガン一家”と噂されるが、ここらで起死回生の一発を!と、NASCARのレース中に地下の金庫に集められる売上金を強奪しようと計画を立てるのだ。
壁に貼ってある計画の10か条は全然計画になってないし、かなり行き当たりばったりなのかと思っていたら、そうでもない。まずは爆破のプロであるジョー・バング(ダニエル・クレイグ)の協力が必要となったため、刑務所で面会し、彼を脱獄させ、強盗終了後に再び刑務所に戻すという作戦だ。そのため、クライドがコンビニに車で突っ込み、同じ刑務所に入るという、ちょっとふざけた計画。さらにメリー・ローガン(ライリー・キーオ)と、バングの2人の弟をも仲間に入れる。
全編通してゆるい会話で笑わせてくれる。盗みのシーンもどことなく可笑しい。エアシューターの一部を爆破で壊して現金を吸い取るという珍しい手法なのですが、クライドの義手が間違って吸い込まれるとか、ボケすぎだ。計画は居なくなったクライドとジョーのため刑務所内でも実行される。完全犯罪とするべく、意外にも細かな計画が立てられていたのだった。欲を出すと失敗する。ということが印象に残る。
FBI捜査官役でヒラリー・スワンクを使うなど、かなり贅沢な配役です。なんとも疑わしいローガンたちであったが、アリバイにも気をつかっているので、捕まえることもできない。しかも、盗んだ金の大半をガソリンスタンドに置いて行って、金額さえハッキリさせないところもよかった。
【2017年11月映画館にて】
ギシュするなら今のうち
将来有望だった元クォーターバックのジミー(チャニング・テイタム)は膝を痛め、 いまはしがない派遣建設作業員。別れた奥さんとかわいい一人娘は別の金持男と暮らしている。イラク戦争に2回従軍し左腕を失ったクライド(アダム・ドライバー)は雇われバーテンダー。不運に見舞われた兄たちを影ながら見守る口の悪い妹メアリー(ライリー・オキーオ)は地元の美容員。そんな3兄弟が、地元ウエストバージニアで行われる一大イベント“コカ・コーラ600”というNASCAR耐久レース会場の莫大な売上金を奪取する計画をたてるのだが…
『オーシャンズ11/カントリー版』などと揶揄されているが、緻密に組み立てられたシナリオはかなりの完成度。映画前半におけるチャニングとアダムのとっぽい会話に騙されていると後で2度見、3度見するはめになるので注意が必要です。特に兄貴ジミーのトラブル発生を事前に予測した保険のかけ方がお見事。見ればわかることをクドクド説明されてもねぇという方だけに、他の考察サイト等ではあまり触れられてないことをここでこっそり教えちゃいますね。
①1週間早まると何が問題なのか?
金庫番の太めのおばさんの誕生日よりも、1週間早い工事終了が決まってしまったのでは。誕生日でもないのにとボヤくおばさんの車に当て逃げし時間稼ぎ、金庫内にケーキを残留させることに成功します。後は消毒会社に扮したバンク兄弟がケーキにたかったゴキブリの色を判別すれば、自動的に金庫につながるパイプを特定できるわけです。
②ジョー・バンクの作った爆弾はなぜショボかったのか?
邪魔になる噴出口のみを破壊し、札を回収するためバキュームパイプを突っ込めるだけの隙間があればよかったのです。爆破の影響で落石事故など発生したらそれこそ計画はおじゃんです。わざわざ爆弾専門家ジョー・バンク(ダニエル・クレイグ)に声がけしたのも、そのほどほど加減が素人には難しかったからでしょう。白煙を感知した警備員が現場を見回ることも想定内、自動車工場のアールにタバコを吸ってもらってまんまと誤魔化したのです。
③金網が壊れているように見せかけたのは
協力を持ちかけられたジョー・バンクとしては、ありったけの金をネコババする目論見が最初からあったはず。何せPOSシステムが破壊されているので現金でいくらあるのか誰も把握できていない、ここが本件のポイントです。に対し、引き際のルールをきっちり守りたいジミーとしては、奪った金の半分を返還しておけば主催者側も訴えを取り下げることがわかっていたはず。よってあそこであえて時間稼ぎ、バンク兄弟がいなくなった隙に残り半分の金を別の車に積みこむ時間を作ったのではないでしょうか。
④クライドのバーにおかれた古い義手
怪しいとにらんだ容疑者が一同に会しているバーに突如現れたキレキレのFBI捜査官(ヒラリー・スワンク)。ダース・ベイダーを思わせる高価な義手を着けながら接客するクライドの横にポツんと置かれた古い義手。ボヤ騒ぎに紛れて刑務所にこっそり戻った時には、義手は確か現金と一緒に封印されクライドは装着していなかったはず。刑務所のビデオにもしっかり映っていたのでしょう。それがここにあるということは…「あたんたの義手新しくなっているようけど、古いのはどうしたの?」とばかりにニヤニヤ笑いを浮かべるヒラリー・スワンクの目がやけに鋭かったですよね。
⑤本作制作中に強盗にあったのはあなただけ
エンドロールの最後に、実はソダーバーグから重要なメッセージが。「この映画はフィクションです」のクレジットの下に実はこの意味深なメッセージが。制作費をめぐってハリウッドと対立一時監督引退宣言までしたソダーバーグは、現在自身が立ち上げた制作会社で細々と作品を発表し続けています。しかしブロックバスターのように巨額の宣伝費をかけられず興業成績もいまいちとか。本作のようにいい映画は作ってるんですけどね。「ちゃんとお金を奪われて(払って)映画を見てね」お金で苦労しているソダーバーク流の観客もしくは出資者にむけられたジョークだったのではないでしょうか。ふたをあけるまでいくら儲かるのか誰にもわからないところや、後で協力者(出資者)に収益金を分配するところなど、このクライム・ストーリーそのものがどこか映画制作と似ているのです。
今回のコ口ナ騒動で映画関係者も大分痛手を受けているようで、今後湯水のごとく宣伝費をかけられなくなってくる時代がやってくるかも。そうしたらやっぱり本当にいい映画を作れる映画監督さんだけが生き残っていくのではないのでしょうか。
アメリカをやっつけろ
痛快なクライムサスペンス?だけど、アメリカdisがけっこう強烈。
主人公のジミーは夢破れたうえに理不尽な解雇をされた人だし
弟は戦争で腕(前腕と手)を失った退役軍人。
どちらも社会システムみたいな巨大なもんに何かを奪われた人で、
その人たちがザ・アメリカって感じの、まさに資本主義の権化みたいなもんから金を盗む話。
レースの開会式の歌とか、レーサーのユニフォームとか、すごくザ・アメリカ。
大金を盗んで窮鼠猫を嚙むって感じなのに、
猫サイドが痛がらないもんだからWIN-WINっていう。
大企業は転んでもタダでは起きないしたたかさを持ってるとことか
ラストシーンにFBI捜査官を出してくるとことか、あそこまでキレイにオチをつけてなお
「全部うまくいくわけないけどね」 みたいな苦味を残すあたりもほんとに粋だと思う。
アダム・ドライバー、やっぱり好きだなぁ。
さすがオーシャンズの監督ならではの痛快作
【ローガン一家、不運の連鎖を断ち切るために一発逆転を狙う。切なくも面白きソダー・バーグ監督のカムバック作品】
ローガン三兄妹は人生に行き詰っていた。
・長男、ジミー・ローガン(チャニング・テイタム)はアメリカンフットボールのスター選手だったが、肩を壊しプロを諦めた。
・次男、クライド・ローガン(アダム・ドライバー)はイラク戦争で地雷で左腕を失い、空虚な日々を送る。不運の続くローガン家の呪いを信じている。
・長女、クライド・ローガン(ライリー・キーオ)は美人の車好きのスピード狂。
の三兄妹が人生一発逆転の大勝負に出る、というだけで面白さに期待するではないか。
そして、彼らがスカウトした伝説の爆弾魔、ジョー・バングをダニエル・クレイグが嬉々として演じる・
観ている方は、”ジェームズ・ボンドが笑いながら爆弾を仕掛けている、ああ、脱獄した・・。何だかとても楽しそうだぞ、タトゥもばっちり入っているし・・。”と007では渋さ極まりない、ダニエルをとても新鮮に鑑賞した。
三兄妹が全米最大級のカーレースの売上金を強奪するシーンの間抜けな、面白き展開に笑いを堪える事が難しかった作品。
<2017年11月18日 劇場にて鑑賞>
負け犬たちの一発逆転映画
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