ネルーダ 大いなる愛の逃亡者のレビュー・感想・評価
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とても奇妙な伝記映画、むしろ幻想譚
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ホドロフスキーが自らの若い頃を描いた「エンドレス・ポエトリー」でも大詩人として名前が登場するチリが誇る偉人ネルーダ。その実像に迫った、というよりも、ネルーダという人物をモチーフに幻想的な詩を綴ったような映画だ。
歴史的な事実を踏まえつつ、語り部になるのは(おそらく架空の人物だと思われる)捜査官。政治犯としてのネルーダを追いかけている彼のナレーションは、知りようもない他人の内面を語ることもあれば、ナレーターの役割を超えて自分自身の内面の葛藤を吐露することもある。
やがて捜査官はネルーダという巨大な影を追ってひとり荒野へと分け入っていく。ある意味ではネルーダは「地獄の黙示録」のカーツ大佐であり、ガエル・ガルシア・ベルナル演じる捜査官はウィラード大尉なのだ。しかし二人が相まみえることがないまま、語り部は孤独に死んでいく。ネルーダとはなんだったのかという大きな謎は、残酷な詩情の中でふわふわと漂ったままなのだ。
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