アムール、愛の法廷のレビュー・感想・評価
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生後7ヵ月の娘を殺した容疑で被告人ベクランが裁かれる。裁判長ミシ...
生後7ヵ月の娘を殺した容疑で被告人ベクランが裁かれる。裁判長ミシェル・ラシーヌ(ルキーニ)は陪審員を選んだとき、秘かに想いを寄せていた相手ディット・ロランサン=コトレ(クヌッセン)が選ばれたことに驚く。彼女は医者で、ミシェルがかつて入院していたときにずっと側にいた女性だ。17歳の娘もいるが、落ち着いた美人だ。
裁判の進行はメインテーマでなかったことに途中で気付く。陪審員と裁判長が個別に会うことは違法でないことを強調していたことで、2人の会話が重要になってくる。直接的な愛情表現は抑えていたが、次の裁判にも来てくれという約束を果たしてくれたことで今後の成り行きが想像できる仕組みだ。
序盤ではミシェルの裁判長としての評判などが噂されるが、有罪となったら最低10年の刑期だとか、人に嫌われているだとか、悪いイメージばかり。それが被告人に有利に向かうように発言することで徐々に好人物というイメージに変わっていく。全編通して静かに進む映画ではあるが、なかなか面白い趣向だった。
伏線もオチもないが、多様性は感じる
王道のフランス映画である。
男女の恋愛がテーマだが、男性は初老のおじさんで、女性は大きな娘のいる中年、激しく燃え上がる恋ではなく、ゆっくりと温まっていくもので、物語は彼らの今後をほのめかすだけで終わる。
これといった伏線もなく明確なオチもない、苦手な人には物凄く苦手な作品であろう。
主演の気難しい裁判長ミシェル・ラシーヌを演じたファブリス・ルキーニの過去の作品は『屋根裏のマリアたち』を観たことがあるぐらいだろうか。
この作品では、スペイン人女性に恋をして人間性を取り戻す気難しい男を演じていた。
本作の裁判長も過去に恋をした女性に法廷で偶然再会したことで人間味を取り戻していくので、似たような役を演じていると言える。
ルキーニはインタビューで「私の演じてきた役は非常に少ない。私は自分の限界を楽しんでいる」と述べている。
他にも「カフェで女性を振り返らせるようないい男を演じることはできない」と述べていたり、「役を作り込むような要求をしないでほしい」と述べるなどフランス人らしい発言を連発していてなかなかユニークである。
エリック・ロメール作品にも出演しているらしいので、我が家に眠ったまま未視聴のロメール作品でいずれはチェックしようと思う。
判事が恋する女性役のシセ・バベット・クヌッセンは『インフェルノ』に出演していたらしいが、どんな役だったのかも覚えていない。
その他の法廷の陪審員や被告、判事、証人などのほとんどが素人を起用しているようだ。
監督のクリスチャン・ヴァンサンも「役者が私を驚かせてくれることを期待している」と述べているので、陪審員たちが法廷の合間に昼食を取りながら世間話をするところなども含め結構アドリブが多いのかもしれない。
本編中、陪審員を選ぶ際は法廷にいる人々の中から立候補して選ぶ仕組みになっているのだが、面白いのは被告の弁護士が相手の見た目で判断しているところである。
いかにも軽薄そうな外見の女性やアラブ系の男性は違う裁判になっても冷たく拒否されている。
本当に裁判が判決に至るまでの過程も主演2人のやり取りも淡々と進んでいくだけの作品である。
ただし恋する相手を想ってソワソワして、相手にいいところを見せたくて人間らしくなる初老の男性を主役に据えるのは意義深い。
日本では恋愛映画と言えば高校生やせいぜい20代が主役である。
初老の男が女性にアプローチをかけるなど「ストーカー!」とか「キモイ!」などとひどく拒絶されそうである。
日本で本作のような作品が映画化されるイメージが湧かない。
多様性がつとに乏しくなっている日本映画の現状では、この手の作品が制作されること自体が羨ましい限りである。
シセ・バベット・クヌッセン
主人公(ファブリス・ルキーニ)は気難しい裁判長だったが、ある日、陪審員審査で以前、恋心を抱いた女医(シセ・バベット・クヌッセン)と再会する。
裁判が進行していくなかで主人公は想いを隠せなくなる。
女医も主人公の裁判指揮をみてまんざらではなさそう。
デンマークのシセ・バベット・クヌッセンのファンとしては言うことなし。
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