「映画に成りきれていない」嘘を愛する女 猫シャチさんの映画レビュー(感想・評価)
映画に成りきれていない
ありきたりではありますが、プロットは良かったと思います。巧い監督さんが撮っていれば高評価できたかも知れませんが、残念ながら本作は映画として成立していないように感じました。
この手の作品はミステリー要素でストーリーを牽引しつつ、間に挿入されるエピソードで登場人物の心のひだをすくい取り、観客にしっかりと感情移入させることで最後の感動へとつながるのですが、本作はとにかく話の展開が荒いです。謎の提示→その顛末を描く→次のヒントが出る→その顛末を描く・・という段取りを消化するのに手一杯な印象です。監督さんの本業がCMディレクターのためか、あまりにも演出・キャストへの芝居の付け方が分かりやす過ぎるのもマイナス。例えば主人公を出し抜いて次の企画を任された同僚の女性が、主人公と目があった時の見え透いたドヤ顔の演技など、そんな分かり易い芝居はCMかTVでやるもので、映画でやるのはやめて~と思いました。とにかく登場人物が皆、人間としての感情の階層が浅いです。台詞も、お芝居も、もの凄く表層的。それは映画的なドラマ作り・芝居とは真逆のベクトルかなと。
また、お話の展開上夕陽のシーンが多いのですが、びっくりするくらい絵的に映えるシーンが無かったですね。夕陽が綺麗に撮れる日まで撮影を順延する予算が無かったのか、役者のスケジュールを押えられなかったのか、とにかくやけに眠たい絵が多く、せっかくのロケなのに勿体ないなと。そしてメインキャスト以外の役者の演技が微妙。「名もない現地の人々」を訪ねて回る作品なので、旅先で出会う人々も重要です。もうちょっとケチらずにいい役者を使って欲しかったです。色々と製作事情が垣間見えるチープな作りで、一番いい仕事をされたのが予告編作った人・・という感じの映画でした。