「若者たちの心を深く深くえぐっている」リバーズ・エッジ R41さんの映画レビュー(感想・評価)
若者たちの心を深く深くえぐっている
登場人物たちはすべて高校生という設定。
1993年の漫画が2018年というごく最近映画化されたようだ。時代背景を1993年に設定している。
おそらくこの作品は若者に向けられたメッセージだと思う。少し前の若者ではなく、現在の若者に対する進言が込められている。
最後に山田がハルナに話した「田島の幽霊を見た気がする。気配を感じる。何もしないでずっとそこにいる。生きている田島より死んだ田島の方が好きだ」
これは、若者たちがお互い、そして家族など身近な人に対してもそんな風に感じている実態を言葉にしたのではないかと思った。
いつも家にいる。いつも学校にいる人物。中には友人という人もいるだろう。しかし、誰も本心を言わず、悩みも言わず、感じたことを言葉にしない。それを日常の中にまぎれさせながらごまかし続けている。
それを特徴化すると、観音崎や小山などのようになっていくのだろう。
中でも特徴的なのが山田と吉川だ。
死体を見ることで得られる安心感。ざまあみろと思う心。
そして吉川が言った「逃げ道は誰にもない」 つまり誰でもいつか死を迎える。
この生に対する無価値観や無意味感を抱き続けている現代の若者に、作者は訴えかけているのだろう。
この作品構成のインタビューが面白い。インタビュアーは登場しないが声で吉沢くんとわかる。
彼は山田としてインタビューしているのではなく、吉沢くんとしてそれぞれのキャラを演じた彼らの心理描写を役者がどう捉えたのかを、それぞれの役柄から答えてもらうようにしているのだと思う。
吉沢くんのインタビューの質問こそ、視聴者が一緒になって考えるべきことなのだろう。
そしてハルナ役をした二階堂さんが、ハルナという人物を通して、作中の出来事で学んだことを言葉にした。
「私はどっちかというと、生きていないと思う。それは変わらないから。石やプラスチックのように。生きているとは感じることだと思う。温かいものを温かく、冷たいものを冷たく。田島が死んで初めている者がいなくなり、もういないと初めて感じた。それでも私は生きていたい。傷つき、忘れ、思い出しながら。泣き、笑い、怒ったりしながら。それを感じて生きていきたい」
普段顔を合わせていながら感じたことについて何も話さない、伝えようとしないことで起きる実体のない集まりが現代社会だ。
「死んだ人しか好きになれないの?」 山田に対しそう言ったハルナだったが、その変わらない特徴を持ち続けている山田の「現実離れした者への憧れ」に対し、理解しにくいながらも、自分の言葉で自分自身を表現してくれた山田に対し、やがてそれを受け止める気持ちになったのだろう。
どんなことでも、意味が分からなくても、「そう思う」「そう感じた」という誰かに対し、一旦は受け止めてあげること。
すぐ反応しないで、ジャッジしないで、受け止めてあげること。認めてあげること。
これが人に対する最初の接し方なのではないかと感じた。
ネット社会、思ったことを表現すればどこの誰だかわからない者によって口撃される。
だから誰も何も言わなくなったのだ。
この社会性がもたらした現実をこの作品が伝えている。かつての警鐘は、さらに色濃くなっている。
深読みすべきすばらしい作品だ。