劇場公開日 2018年5月4日

「未来と希望と切なさと」ラプラスの魔女 サンフラワーさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0未来と希望と切なさと

2018年5月9日
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原作では各登場人物の目線で描かれているものを映画では青江をストーリーテラーにしている、と事前情報。地球化学というワードに多少戦きつつ着席。…あっという間に引き込まれた。櫻井翔演じる青江は圧倒的天才でもバッサバッサ事件の謎を解く探偵でも無い。玉木宏演じる中岡刑事や主人公の1人円華(広瀬すず)に振り回されながらも揺るぎなく立つ、唯一の傍観者である。振り回されっぷりから静かに見守り希望を感じさせるラストまでの幅広い役回りを櫻井翔が好演している。何より表情がとても良い。押し付けがましさがないのがこの人の特徴で、だから青江は適役。
広瀬すず、福士蒼汰はいわゆるアイコンとしての主人公。この2人の演技はちゃんと見るのは初めてだが、違和感なかったしとても好ましい。玉木宏、リリーフランキーは安定。豊川悦司は豊川悦司なのだが、これもこの役には合っていた。原作と比べたら当然割愛されている描写も多い(特に青江)のだろうが、きちんと成立している。そして東野圭吾の描く空気感は全く損なわれていなかった。これがとても大事で、だからこの作品はとても優れていると思う。
三池監督作品のパブリックイメージとは違うのだろうが、私はそもそも三池作品を数本しか観ていないのでこれまた何の違和感も無く、それより静と動、緩急つけつつラストの救いのカットまで徹底的に作り上げてるのに感動した。ぜひこの続きがあるなら三池監督で観たいと思ったほどだ。エンドロールの『FADED』、沁みる。
気象予測という近年ニュースで話題になる題材(必ず起きるのにまだ全て完全予測できない現在も含む)が絡んでいるのも面白い。
見終わった時に感じるのは切なさだけではない。切ないけれど温かな光もまた感じられる。

なるべくなら複数回鑑賞をおすすめ。特に1回目でモヤモヤしたかた、ケムに巻かれたようでなんか…というかたはぜひ!分かった瞬間、ハマります。
全てが語り尽くされていないとご不満なかた、敢えて説明されない部分を色々想像するのも楽しいです。
加賀恭一郎や湯川准教授を求めてはいけません。この話の本当の結末はまだ誰にも分からないのですから…。
とにかく、ごちゃごちゃ考えるよりまずはフラットな気持ちでご覧あれ!新たな東野圭吾ワールドに飛び込んで!

サンフラワー