「心臓移植をめぐるリアルな群像劇と詩的な映像の絶妙なバランス」あさがくるまえに AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
心臓移植をめぐるリアルな群像劇と詩的な映像の絶妙なバランス
冒頭、未明にベッドから抜け出した青年が二階の窓からふわっと飛び降りる、そのショットでいきなり心をつかまれた。危険と自由の隣り合わせ。37歳のフランス人女性監督、カテル・キレヴェレの長編第3作にして日本初公開作品。スローを効果的に使った詩的な映像のセンスが抜群で、敬愛するというガス・ヴァン・サント作品に似た雰囲気も。
事故で脳死になった青年と心臓疾患の中年女性を2つの軸とする、それぞれの家族や恋人、医療従事者たちの群像劇。説明しすぎず、省略の加減が絶妙なストーリーテリング。登場人物の想像を実景にシームレスに現出させる手法もうまい。近親相姦を想起させるイメージも描かれるが、誕生と死の重ね合わせだろうか。
タハール・ラヒムが演じる臓器コーディネーターが印象的。はじめは配慮不足の無神経な男のように思えるが、手術のシーン(メイン画像の場面)でそんな予断がひっくり返される。
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