「邦題の秀逸さ」女神の見えざる手 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
邦題の秀逸さ
原題は『ミス・スローン』であり、確かに劇中、公聴会での委員長からの声がけが耳に残るのでそういう意図があるのだろうが、数多あるダメ邦題の対極である今作品はこれこそ原題を替えた方が良いかもしれないと唸らせる。アダム=スミスの経済学を知らなくても言葉だけは受験で憶えているだろうから、その語彙のチョイスは正に今作品に的を射るWordである。他のレビューで、邦題を貶している人が多かったが、もう少し今作品の主人公のトリックを見直した方が良いと思う。凡人には思いも付かない事をするのだから、これこそ『見えざる手』なのだ。
実際、作品のテーマというより構成が、結果から時間軸を後ろに巻き戻していくと理解しやすい体でできているのではないだろうか。勿論、ストーリーは順を追って(公聴会から始まるので、その原因は遡る構成で進むのだが)、進んでいくがしかし、余りにも出来すぎたラストのどんでん返しとそれを匂わす伏線張りと回収は、ちょっと恥ずかしい位かもしれない。実際のロビィ活動がこんな風に流れているとすれば、超能力者とネズミしかいないアメリカの政界ということになるのだろうが、現実はネズミしかいないんだろうな(苦笑)結局、金と地位に綿々と縋るのは人間の業かもしれないが、それを女神宜しく、痛快に倒していく様は出来すぎたヒロイン像を演出するザ・映画らしい手法であると読んだ。今作品は原作が小説なのか調べていないので不明だが、多分、小説的な造りなのとしか思えないのだが、どうなのだろう?
ただ、余りにも専門用語が洪水のように吐出されるので、置いてきぼり感も否めないが・・・
いずれにせよ、甘酸っぱいカタルシスが得られることは間違いない。ラストの『後5年刑期がある』との台詞の意味合い、そして、刑期を終えた後、刑務所から出てきたショットに、なぜだかこの作品のシリーズ化がちらつく終わり方に、面白さを感じた作品であった。