「人生の最後に、この映画を観たい。」エタニティ 永遠の花たちへ 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の最後に、この映画を観たい。
「死ぬ前に何を食べたい?」なんてたまに話題に上ったりするけれど、もし人生の最後に見る映画を選べるのなら、私はこの作品にしようかと思う。もし自分の死期を知ることが出来て、最後に何か1本映画を観るとしたら、この映画を観たい!
それはこの作品が、まさしく自分の人生を思い出とともに振り返っているかのような雰囲気があるからでもあるし、それ以上に、命が受け継がれて繋がれていくことをありありと表現し、生きることも生まれることも死ぬことも見送ることも、とても当たり前のことで美しい自然の摂理だと信じさせてくれるからだ。また、自分の100年足らずの人生だけでなく、自分が生まれる前の歴史と、自分が死んだあとにも続いていくであろう命の永遠をもこの映画に感じ、あぁきっとこの映画を死ぬ前に観たなら、死ぬことを怖いとも哀しいとも思わずに逝けるだろうと思ったのだ。
映画は長い年月を思い出のページを捲るように描いていく。そして嬉しいことと悲しいこと、思い通りになることとならないことを、大凡交互に綴っていく。中島みゆきの歌ではないけれど、喜びを縦糸に哀しみを横糸にして、家族の歴史が編み込まれて過去も現在も未来も織り込んで広がっていく様子がとにかく美しかった。華やかで優美な映像と、美しいクラシック音楽。そして広がっていく命の永遠。すべてが美しい映画だった。
そして物語には、特に女性の生き方の選択があらゆる形で描かれていた。母になる者、ならない者、子を看取る者、子を残して先立つもの、夫を看取る者、夫に先立たれる者・・・そしてその都度その都度下される人生の選択。たった2時間の映画に、女性の人生の選択がこんなにも表現された作品もなかなかないだろうと思うし、そのひとつひとつに胸をぐっと掴まれ、またそのしなやかな凛々しさに心満たされていった。「生きるということは、死者を見送ること」。あまりにも悲しいシーンで、だけど映画を象徴するような一際力強さを感じる名セリフ。とまれ、その死があることで、永遠が生まれているのだ、という希望にもつながるかのようだった。
この映画には2つの永遠が描かれた。命を受け継いで繋いでいく生命という名の限りなく永遠に近いもの。そしてもう一つは死という永遠の眠り。これら2つの永遠を交差させながら美しく壮大に描くことに成功した、素晴らしい作品だった。