エタニティ 永遠の花たちへのレビュー・感想・評価
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【19世紀フランスの三世代大家族の、生と死に対面する歓喜の時、哀しき時を季節の花が咲き誇る庭、当時の調度品,美しき衣装と共に描き出した作品。人生賛歌を謳いあげた作品でもある。】
ー 今作は、人生賛歌を謳いあげた作品である。ー
<Caution 内容に触れています。>
・ヴァランティーヌ(オドレイ・トトゥ)は、親の決めたジュールとの結婚を一度は拒否するが、ジュールの想いを知り、結婚。
8人の子供に恵まれる。
だが、男子の双子は、童貞のまま戦場に散り、娘エリザベートも病に倒れる。
”人生は死者を見送る事・・”と悲嘆にくれるヴァランティーヌ。
更に、もう一人の娘マリゴは、修道院へ行ってしまう。
ー 波乱万丈な人生であるが、この物語はこんな程度では終わらない。ー
・ヴァランティーヌの息子アンリは幼馴染の美しき女性マチルド(メラニー・ロラン:「イングロリア・バスターズ」のあの女性ですね。)と恋に落ち、娘に恵まれるが、40歳で産んだマリーの命と引き換えに自分は命を落とす・・。
ー 末期のシーンで子供達に、マチルドが遺した崇高な言葉。ー
・マチルドの従従妹で親友のガブリエル(ベレニス・ベジョ:「アーティスト」のあの大スターになって行く女性ですね。)は、不器用なシャルルと親が決めた結婚をする。
当初は、ギクシャクしていたが、マチルドはシャルルの深い愛と情を知り、二人は幸せな家庭を築いて行く。シャルルに起こったある事件までは・・。
ー だが、彼女の哀しみを癒す周囲の優しき人々の姿。ー
・大きな食卓に集まった、ヴァランティーヌとジュールの子や、孫のシーンが今作が言わんとしている事を象徴している。
ー 私たちは、哀しき事を乗り越えて、繁殖していくのだ!輝かしい未来のために。その一方、天寿を全うする、ヴァランティーヌもキチンと描かれている。ー
<とにかく、登場する三世代の登場人物の数が凄い。
だが、キチンと観ていれば違和感なく鑑賞できる。
結婚や、子供の誕生の歓喜の時と、死や別れの哀しき時。
そのすべてが、人生であり、世代から世代へ生が受け継がれていく事を表した、ラストのシーンは素晴らしい。
当時の美しき衣装や、調度品。庭に咲き誇る花々も印象的な作品である。>
あとに残る映画かもしれない
この監督は「ノルウェイの森」を手掛けた人なのですね。「あぁ、なるほど〜」という感じ。
「ノルウェイの森」鑑賞時は、少々退屈で独りよがりの作品、という感想をもった。それでいて、映像や台詞の一部が強烈でいつまでも忘れられず、 結果的にはインパクト大で、何が言いたかったのかと時々印象に残るシーンを思い出しては考えさせられてきた。
この映画にも同じようなものを感じた。これも後々忘れられない映画となっていくのかもしれない。
焼き付けられた印象って、なかなか消えないから…。
それにしても、結婚、出産、子育て、死別、で終わる女性の人生って地味だ。観ていて眠くなってきた。
それが最後の方ではだんだん重みを帯びて感じられてくるのだから、その点、上手くできた映画なのかもしれない。
ただ、女性の生にも現実的にはもっといろんな要素がある。そういうものを感じさせない美化された内容に、観ていて少しイライラ感というか、仮想空間にいるような閉塞感を感じる。
女性の生のある面だけをピックアップしている作品だから、と割りきればよいのでしょうけど。
きれいすぎるけれども。
音楽と映像の美しさが、際立つ作品。
サントラ出してほしい。すごく気持ちの良いピアノ曲がいっぱいかかってて、たまらんと思った。
曲名がわかったのは以下の2曲だけ(ドビュッシーが好きだから知ってただけ)。
他も知りたい。
でも曲目リストどこにもなかったし、エンドロール一時停止するしかないのか。
アラベスク第1番
少女のマチルドと少年のアンリが自転車乗るごっこをするシーン、鳥肌もの。
月の光
アンリとマチルドの夜のシーン
マチルドがお産で死んじゃう要因の妊娠をする夜?
本当にセリフが少なくて、人によっては眠くなるだけなんでしょうが、私はとても心地よく観られました。好きです。
ただ、男性の愛は神の愛より確か、とか、娘もやがて子を産むのが自然、みたいな概念は、21世紀的にはちょっと古いかもなぁとか思いました。
私のように子を産まない女はこの世界の輪にいてはいけない?みたいな気持ちがちょっとだけしました。ちょっとだけね。
でも女の人生のクロニクルのひとつとして、美しく切なく見れて良かったです。
命の物語
美しさ、静寂、愛が画面に溢れていました。 少ない言葉でも、選ぶ言葉...
イレーヌ・ジャコブ
☆☆☆☆ 特に興味が有った訳ではなく、単に時間の都合上での観賞でし...
☆☆☆☆
特に興味が有った訳ではなく、単に時間の都合上での観賞でした。
だから内容も知らず。知っていたのは、以前に「ノルウエイの森」で、激おこプンプンになった監督の作品だとゆうことだけ。
だから全然期待などなく観賞開始。
だがしかし…。
ファーストシーンを見た瞬間に確信した。「あ?これは俺の大好物のヤツだ!」 …と。
映画前半は母親が味わう喜びと悲しみ。絶えず訪れる不幸や別れ。そしてささやかな幸せ。
映画の半分辺りからは一転して、娘が結婚し出産。そして母親となってから訪れる喜びと悲しみや不幸。そしてささやかな幸せ…と。
母親としての務めを、出産を通し世代を越えて伝えて行く。
全編ナレーションによって進行して行くので、ストーリーは寧ろ無いと言って良いのかも知れず。エンタメ性も無い為に、合わない人も多いかもしれませんが。自分の中での好みの基準を充たす要素が満載。気が付いたら終盤では思わず号泣していました。
とにかくその照明から醸し出される色調。美しい衣装や美術。滑らかなカメラの動き等々。
まるで動く絵画を観ている様な錯覚を覚える瞬間が沢山有り。男目線が言うと、美女達のオンパレード(笑)
良い目の保養になりました(^^)
まあ、そんな冗談はさておき。
乳飲み子から少女を経て、娘から女性。そして母親となり、やがて祖母へと至る女性として次世代へのバトン。
可愛い少女・娘達の横顔を撮らえていた瞬間、フッとカメラを見据える。その瞬間での、女性としての佇まいの美しさは筆舌に尽くしがたいモノが在りました。
実に素晴らしい作品と出逢えた事で嬉しさも倍増。
素敵な時間をすごす事が出来ました。
(2017年10月10日 キネマ旬報シアター/スクリーン2)
美しさを映画に込めて
ファーストショットからすでに完璧に美しい。
まさかこの美しさがずっと続くまいなと思っていたらこれが本当に冗談抜きでずっと続いた。
この美しさの洪水がむしろ暴力的で非常にドラッギーですらあった。
脳が追い付かない感覚に襲われてくる。
物語は、人が生まれ育ち別れ死にそして未来に繋がるという話。
歴史書の中などでは所謂省略されるような話。
しかしそこには家族がいてそこに生と死があり事件があり愛情があったということを美しく切り取っていく。
恐らく上流階級のあまり生活に困らない人たちの営みで、しかもどの人も愛情を離すまいと常にしっかりしている。
ここに深みがないとか夢見物語だとか言えるかもしれない。
しかし、この美しいシーンの数々を観ていると、この映画の中では人の醜さとか現実の暴力性とかを観たくないと思えてくる。
そして、映画とは即ち虚構の物語なわけで、リアルなことは別に絶対的に必要なわけではないと思えてきた。
この美しいシーン、美しい人々の営みを見続けたい、どうか壊すようなことは起こらないでくれ、とハラハラして観ていた。
まるで、自分の家族に何か決定的なトラブルが起こらないでほしいと願うように。
そして、このような美しいシーンしかないような映像作品こそが、実はとてもぶっとんでいてラジカルで虚構で映画的ではないか、と。
もうとんでもない映画体験だった。
崩れた。
赤ちゃんのシーンとか、初夜のシーンとか、その他にもたくさん可愛らしく、いとおしいシーンがあった。
間違いなく傑作!
人生の最後に、この映画を観たい。
「死ぬ前に何を食べたい?」なんてたまに話題に上ったりするけれど、もし人生の最後に見る映画を選べるのなら、私はこの作品にしようかと思う。もし自分の死期を知ることが出来て、最後に何か1本映画を観るとしたら、この映画を観たい!
それはこの作品が、まさしく自分の人生を思い出とともに振り返っているかのような雰囲気があるからでもあるし、それ以上に、命が受け継がれて繋がれていくことをありありと表現し、生きることも生まれることも死ぬことも見送ることも、とても当たり前のことで美しい自然の摂理だと信じさせてくれるからだ。また、自分の100年足らずの人生だけでなく、自分が生まれる前の歴史と、自分が死んだあとにも続いていくであろう命の永遠をもこの映画に感じ、あぁきっとこの映画を死ぬ前に観たなら、死ぬことを怖いとも哀しいとも思わずに逝けるだろうと思ったのだ。
映画は長い年月を思い出のページを捲るように描いていく。そして嬉しいことと悲しいこと、思い通りになることとならないことを、大凡交互に綴っていく。中島みゆきの歌ではないけれど、喜びを縦糸に哀しみを横糸にして、家族の歴史が編み込まれて過去も現在も未来も織り込んで広がっていく様子がとにかく美しかった。華やかで優美な映像と、美しいクラシック音楽。そして広がっていく命の永遠。すべてが美しい映画だった。
そして物語には、特に女性の生き方の選択があらゆる形で描かれていた。母になる者、ならない者、子を看取る者、子を残して先立つもの、夫を看取る者、夫に先立たれる者・・・そしてその都度その都度下される人生の選択。たった2時間の映画に、女性の人生の選択がこんなにも表現された作品もなかなかないだろうと思うし、そのひとつひとつに胸をぐっと掴まれ、またそのしなやかな凛々しさに心満たされていった。「生きるということは、死者を見送ること」。あまりにも悲しいシーンで、だけど映画を象徴するような一際力強さを感じる名セリフ。とまれ、その死があることで、永遠が生まれているのだ、という希望にもつながるかのようだった。
この映画には2つの永遠が描かれた。命を受け継いで繋いでいく生命という名の限りなく永遠に近いもの。そしてもう一つは死という永遠の眠り。これら2つの永遠を交差させながら美しく壮大に描くことに成功した、素晴らしい作品だった。
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