劇場公開日 2018年3月30日

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「楽しめる。けれど、もっとおもしろくなったはず…」ヴァレリアン 千の惑星の救世主 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0楽しめる。けれど、もっとおもしろくなったはず…

2020年3月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

興奮

萌える

テーマは壮大。心に響く。
映像も圧巻。映像が売りの映画館で観ればよかったと後悔。
主要な役どころの役者も魅力的。ホーク氏のあの役!ぶっとんでた。
なのに、最高傑作!!とはならない。
その要素はもっているのに…。

スターウォーズ』に影響を与えたとされるSF古典コミックの映画化。
 ストーリー他については、正直、アニメや他の映画で使い古されたような…って、それらの元になったSF古典の映画化と考えると、細部のエピソードや設定・宇宙人の造形はよく考え付いたなと逆に驚く。
 主筋は、戦争物に置き換えても成り立つ古典中の古典。

ヒロインの鼻っ柱の強さとか、レイア姫に受け継がれたんだろうな。
ヴァレリアンの性格も、ちょい悪なのに根は真面目、ギリギリなのに強がって見せて、それでいて何とかしてしまうところとかはハンソロにも通じるかな?
「プリンセスに導かれて」事件の中枢に関わっていくというのも、同じだなあと。

とはいえ、この映画では、カップルの恋のイチャイチャが、すごく表面的にみえて残念。「必要なんだ」と言葉でだけで言われてもねえ。バディ感は出ていなかったかな。
 ヒロインもきれいだけれど、峰不二子級に誰が見ても一目でというのでもなく、説得力がない。なにより、ハーマイオニーにみえて仕方がなかった。
 ヴァレリアンも、描き方が中途半端。せっかく、演技できるデハーン氏を使っているのに。若く見えるけれど、この映画日本公開当時デハーン氏は31歳。2012年公開の映画で(2012年デハーン氏26歳)、17歳の高校生の瑞々しさ・危なさを表現できた方。そのほか、陰のある繊細さを演じられる方。そんな魅力が表現されていない。軽さの中に、大人の顔を忍ばせたら、新しいヒーロー誕生になっただろうに。
 『レオン』で、あれだけ素敵な関係性を描いた方なのに。なんで手抜き?

アクションは、さすが『レオン』の監督というところと、もたついているところと。もたついているのは、デハーン氏達、役者のせいかもしれないが。

でもね、脚本がね。勿体ない。
 大筋は、王道のスペースオペラ。でも、エピソードの取捨選択が甘いかなと思う。
 ボウイ氏の曲に乗せてのOPは心惹かれるが、後のストーリーテーリングを考えると、ここをもう少し削って、人物を表すエピソードに割いてほしかった。ヒーロー・ヒロインの関係性とか。「プリンセスに導かれて」「兄が妹の存在を感じて」というのも、力づくで話進めるし。天国横丁の話とか、クラゲの話削ってもいいかも。あ、でもそうするとバブルの話がなくなってしまう。バブルの話は、この映画の中でも一番心に残るエピソード。切なかった。

加えて、ギャグが下手。ほとんど滑っている。
 「最短距離」も、『ミッションインポッシブル』の方が面白かった。ギャグというより、映像を見せたかったんだろうな。
 刀振り上げて突進していくのも小学生か!というギャグを狙ったんだろうけれど、活かしきれていない。間が悪い。
 なにより、ヴァレリアンの軽口が、デハーン氏の声質とあっていなくて、大コケ。ダサ男に見える。フランス語の語感と英語の語感の違いが悪く出たように思う。

そして、何より声を大にして言いたいのが、編集がへた。なくてもいいショットが多かった。スポンサーの意向がとっても反映していた。そこを削って、カップルの恋模様や、パール人のエピソードに割いてほしかった。

そして、予告と、邦題にも、文句言いたい。
 「救世主?」「この男に託された?」「〇時間に救わなければ…」鑑賞し終わって振り返れば、嘘は言っていないのだけれど…、ストーリーの流れから言うと、なんか違う。監督が描きたかったのって、そういうこと?この点でも、採点下げたくなってしまう…。観客が動員できればいいのかもしれないけれど、次売れなくなるよ。

そして残念なのは、フランス映画らしさがあまり感じられなかったこと。

ああ、作り直したい!

(原作未読)

とみいじょん