「古典的名作ノスタルジーだけでは、さすがのベッソンも力及ばす」ヴァレリアン 千の惑星の救世主 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
古典的名作ノスタルジーだけでは、さすがのベッソンも力及ばす
さすが"リュック・ベッソン"・クオリティというべきか。よく頑張ったほうだとは思う。
SFの古典的名作の、21世紀以降の遅すぎる映画化は、影響を受けた作品が先に映画化されているため、映像やストーリーの既視感(観たことがある印象)に押し潰される。
本作は、リュック・ベッソンが青年時代に愛読していた、フランスのSF漫画「ヴァレリアン&ロールリンヌ(Valérian et Laureline)」シリーズの中の一作が原作。シリーズは1967年からの長編21作品と短編集・百科事典が発表されている。1977年公開の「スター・ウォーズ」が影響を受けたのではないかと言われるが、多少似ているだけで、ルーカスは言及していない。
28世紀(西暦2740年)、銀河の平和を守る連邦捜査官の男女の冒険ストーリー。チャラ男系だけど実力のあるエージェントのヴァレリアンと、才色兼備の相棒ローレリーヌの活躍を描いている。
あらゆる種族が共存する"千の惑星の都市"=アルファ宇宙ステーションが舞台なので、とてつもなくたくさんのクリーチャーを用意しなければならないし、宇宙船などのデザインも、それなりに頑張ったと思う。せっかくお金をかけた"Sky Jet"が見所もなく壊れてしまい、もったいない。きっとそんな頑張りが、映画の評価にはつながらない。
ストーリーも前述したとおり古典なので救いようがない。圧倒的な映像美で観客をのみ込むパワーと、展開のスピード感が、さすがリュック・ベッソンである。ぜひIMAX3Dで観てほしい(シネスコだけど)。レンタルや映像配信、機内サービスなんかで観られたら、最悪だ。
リアーナの熱演する百変化宇宙人バブルは、「フィフス・エレメント」のディーバを彷彿とさせる。まるでベッソンのセルフオマージュである。
世界興行的には大失敗作品だが、お金を掛けすぎて回収できないという、これは近年よくある話。国によっては大ヒットしているものの、100億円規模の赤字で、ヨーロッパ・コープのCEOが2017年をもって退任した。
なので、せっかくのシリーズ原作も、ここまでか。
収支バランスを崩して最終作まで無事たどり着けなかった「ダイバージェント」シリーズとか、作品自体が迷走する「メイズランナー」シリーズと同じく、大規模なファンド映画の悲しい現実である。スマッシュヒットでは許されない(泣)。
(2018/3/31 /TOHOシネマズ日比谷/IMAX/字幕:川又勝利)