劇場公開日 2017年12月9日

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「ビオランテかと思ってたら、なんと自警団!」ビジランテ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ビオランテかと思ってたら、なんと自警団!

2020年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 観よう観ようと思っていたのに『ゴジラ対ビオランテ』のイメージがあったので、バイオ怪獣が出てくるものだと勝手に決め込んでチェックするのが遅れてしまいました。調べると、自警団の意味だとわかりましたが、相当重い内容なのでビックリ・・・『サイタマノラッパー』の時は単なる若手監督だと思っていたのに、入江監督の成長が凄まじいと感じる。

 三兄弟が子供のころ、母親が亡くなってから父親のDVが酷くなり、ナイフで父親の首を刺して荒れ地に埋めた。そして一郎は家を出て行った。30年後、父親が亡くなり、長男の一郎がひょいと戻ってきて、遺言書の公正証書を盾に相続権を主張する。二郎は市会議員、三郎はデリヘル雇われ店長ではあったが、巨大なアウトレットモール建設のために二郎は会派の重鎮から一郎の相続放棄をするよう求められ、三郎も同じく雇い主のヤクザから同じことを迫られていた。といった展開。

 田舎にありがちな利権がらみの買収計画。ベテラン市会議員の岸(嶋田久作)からもせっつかれるし、ヤクザからは二郎・三郎どっちでもいいから相続しろと脅される。一郎が一人で遺言書を持っていたのは何故なのか?何故荒地に固執するのか?という疑問点を残したまま、誘致計画は進んでいく。

 暴力、そして権力。深い闇に包まれ、そして堕ちていく人間。さらには二郎も参加している自警団に若者の石原が入団して、中国人居住区に敵対する構図がまた黒い連鎖を表現している。自警団も政治家も同じ穴のムジナ。さらには地元のヤクザだって通じている。言い換えれば、彼らが田舎の町を牛耳っているのだ。

 並行して見せる、右目を失明した石原の放火・暴行も現代社会の闇をえぐったような内容で興味深いし、メインのストーリーも秀逸だ。家族内での暴力、デリヘル嬢に対する暴力、そして暗い世界からもがき抜け出そうとする三郎がかろうじて暴力に立ち向かうのだが・・・。デリヘル嬢たちとそのまま逃げだそうとしたのに、やはりそこは重苦しいドラマ。余韻が残る。

kossy