「人格障害サスペンスの定石。松井玲奈の実力を楽しめる小品」めがみさま Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
人格障害サスペンスの定石。松井玲奈の実力を楽しめる小品
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松井玲奈という女優の実力を楽しめる、ちょっとしたお得感のある小品である。
彼女のプロフィールに"元SKE48"というバッジがついてまわるのは、主演映画の成立要件ではある。しかし、こうして"女優"としてのセンスが磨かれてくると、"アイドル偏見"は障壁にしかならない。
"理華"(松井玲奈)は、職場でのいじめや母親の干渉に悩み、精神安定剤に依存する、コミュニケーション弱者。そんな彼女が出会ったのは、"ラブ"(新川優愛)と名乗る自己啓発セラピスト。あっという間に、"ラブ"のとりこになる。
そして、"自らの思いのままに行動し、発言し、我慢をせずに生きていく"、というラブの主張に傾倒していくうちに、常軌を逸した状況に陥っていく。行き着いた先に待ち受ける、どんでん返しのあるストーリーだ。人格障害サスペンスの定石を使った、プチ「シャッターアイランド」(2010)。
作品として、予算・時間のなさが演出の幅を狭めているのは仕方ないとして、定石としては悲劇的なオチにしないと中途半端になる。どうせ不条理な展開なのだから、最後で丸められても救われない。
松井玲奈は、地味で内向きな女の子をさらりと演じているが、前作の「笑う招き猫」(2017)での、"オンナ漫才師"役とは正反対だ。
誤解を恐れずにいれば、"その他大勢アイドル"の中で育てられた松井玲奈に銀幕主演の華はない。主演ができないという意味ではなく、彼女自身がこうして実力を提示していけば、あとは、いい監督、いい作品に出逢える運だけである。
(2017/6/13/シネマート新宿/ビスタ)
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