劇場公開日 2017年10月20日

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「ハイヒールとウォッカ」アトミック・ブロンド kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ハイヒールとウォッカ

2018年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 予告編でさんざんクイーンの「キラー・クイーン」を聞かされていたのに、本編では全く聞くことができない。お詫びのように「アンダー・プレッシャー」が流れていただけである。

 物語はMI6のロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)の上司であるエリック・グレイ(トビー・ジョーンズ)による尋問形式で進んでいき、極秘リスト奪還のために東西の壁崩壊直前のベルリンに飛んだ彼女の顛末を回想して交互に描くスパイ・アクション。

 氷入りのバスタブに浸かって傷を癒し、ウォッカのロックを飲み干すロレーン。傷だらけの体に右目には大きなアザが出来ている。どこでこんなに激しいアクションを演じたのかという興味を持って、彼女のベルリンでの潜入活動に見入ってしまう。冒頭ではKGBの最低の殺し屋バクティンがガスコインを殺して腕時計を奪ったことから、極秘ファイルは時計の中に仕組まれているとわかるのですが、その内容が全世界のスパイのリストが載っているというシロモノ。別に流出したところで、スパイは皆偽名を持ってるんだから平気な気もするのだが・・・

 MI6ベルリン支局のパーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)と組むように命じられたロレーンは早速合流し、東西ベルリンを行ったり来たりする。途中、フランスの女スパイ、デルフィーヌ(ソフィア・ブテラ)に翻弄されながら、自分の行動が筒抜けになっていることに気付き、敵か味方が分からなくなるという状況。リストを全て暗記しているというスパイグラス(エディ・マーサン)を保護しながら西へと向うのだった。

 とにかくシャーリーズ・セロンの魅力満載映画であり、彼女に興味のない人にとっては苦痛でしかないかもしれない。接近戦、とくにハイヒールキックや裏拳を得意とするアクションが楽しめる上に、7分半もの長回しアクションは特に素晴らしい出来ばえで臨場感たっぷり。その7分の間にスパイグラスの出血量が増え、顔が青ざめるところまで変化し、ロレーンも細かい傷がどんどん増えていくおまけつき。

 “サッチェル”という二重スパイがどうとかこうとか、もはや忘れ去るというか、どうでもよくなるくらいのアクション映画でした。ただ、アクション以外の部分では東西いったりきたりでだらだらしてるため退屈になるかもしれないし、ベルリンの壁崩壊という背景がそれほどの効果をもたらしてないのも事実。終わってみると、なぜリスト争奪戦を繰り広げていたのかもわからなくなった。

kossy