犬ヶ島のレビュー・感想・評価
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美しい構図の連続
むちゃくちゃ面白い映画だ。皮肉が効きまくっていて日本映画への愛あるオマージュにあふれていて、それでいて圧倒的な独創性がある。
この作品に対して日本の侮辱だと言う人が一部にはいるらしいが、とんでもない。日本文化が好きでよく調べていないとこういうカリカチュアはできない。
ウェス・アンダーソン監督のストップモーション作品は、「ファンタスティック Mr. Fox」があるが日本ではあまり評判にならなかった。アメリカでは多くのフォロワーを生んだ作品だったので日本でも再評価されてほしい。
本作は、ストップモーションの強みである立体感や奥行きの表現を効果的に用いている。奇想天外な世界がただの絵空事でなく、本当に存在しているかのような実在感を見事に作り出している。
構図も見事に決まっていて、監督の美学が随所に感じられるし、キャラクターもかわいい。アンダーソン作品の中でもトップクラスの作品ではないだろうか。
ウェス・アンダーソン館長の手作り博物館。
正直、予告編を観た時は不安しかなかったのだが、本編を観たらほとんどすべてが杞憂に終わった。本当に細部まで丁寧に作り込まれた極上の箱庭に、エキゾチックな「日本」がこれでもかと詰め込まれている。カクカクとした動きも、名優たちによるローテンションなセリフ回しもすべてが味わいであり、これほど精巧で良質な趣味の世界を見せられると、個人所有の博物館で館長直々にもてなされ、案内してもらっているような気持になる。
ただ、ウェス・アンダーソンが日本に愛着をもってくれていることは疑うべくもないが、そのアンダーソンをもってしてもなんでもないところにキノコ雲を出してしまうのか。悪意はないだろうが軽率だなあとは思う。『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』の原爆実験のシーンでも似た歯がゆさを感じたが、いつかこの溝が埋まればいいなと思う。
軽い問題提起を含んだ映画だが、配慮は欲しかったところ。犬好きは是非。
今年431本目(合計1,522本目/今月(2024年12月度)10本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
犬がテーマの映画です。犬が多少「不当な扱い」を受けるシーンがありますが、それは後半のいわゆる「犬の仕返し」のシーンのためであり、虐待シーンといいうるものはないので(最大限見てPG12か)、虐待シーンがある映画を避ける方も特に問題ないです。また犬がテーマなので犬好きにはおすすめです。
アメリカ作品で、犬に関する病気が流行ったある「日本の都市」を舞台にある条例が可決され、それによって引き離された人と犬の交流や、あるいは「囚われの場所」(特にネタバレでもないでしょう。犬ヶ島)に行くというストーリー、かつアニメ作品です。
アニメ作品といってもここでも予告編が見られるようにいわゆる普通にいうアニメではなく、何らかの問題提起(ここでは人と犬の共存か)をしたいときに用いられるアニメタッチの作品です。アニメタッチの作品といえば独特の「ぬるぬる感」を気にされる方(ごく最近の映画だと「がんばっていきまっしょい」が該当しえたか)がありますが、この映画はそれはありません(気になる方は予告編を見ることをお勧め)。
短い作品ではあっても、人と犬との共存や、独裁者(というかやりたい放題の市長か)の問題提起などいろいろな部分にわたります。そうした問題提起型の映画は「どちらかというと」眠くなる、退屈になるというところはあるのでアニメタッチの作品ですが、これもよかったところです。
※ しかしこの映画、新作でもないのになぜかtohoシネマズ案件。今後、当該監督さんの新作が出ることの「お祝い」で過去作品が放映されているのでしょうか?(12月はどうしても作品数が少なくなるので「穴埋め」(=過去作品で無理やり番組枠を埋める)が生じることはわかるが、それでもtohoシネマズ系のような大手の映画館が「穴埋め」をする意味はよくわからない。極論、ドクターXかモアナでもいいはず)
採点に関しては以下まで考慮しています。
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(減点0.3/アメリカの作品であるのに日本を舞台にしたため理解に混乱をきたす)
この作品はアメリカ作品です(よって基本的には字幕。なお、VODなどでは吹き替え版も選べる。吹き替え版があるのだから、そもそもは「日本映画ではない」)。
一方で舞台は日本の架空の都市を扱って「市長が犬追放の条例を制定しうんぬん」というものですが、長(「ちょう」。地方自治法上の用語。市長ないし町長ほか)は単独で条例を制定できません(地方自治法)。この点は明らかに無効な行政行為と解されるので無効確認訴訟の対象である一方、その話をしないのも謎で(まぁ、その話をしても理解できるのは行政書士の資格持ちしかいない)、100分と短い映画のため、「議会で通すシーン」等を適宜省略したのだろうと思います(ほか、本作では適宜シーンがカットされているようです。帰宅後、VODで日本語版をみたらやはりいくつかのシーンが妙に抜けているところを確認)。このため、資格持ちは「なんで市長が勝手に条例を制定できるんだ」というところで理解が詰むのだということになります(この映画で「日本」が舞台なのは本質論ではないので、「架空の国です」にしておけばそういう突っ込みは来ない)。
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これはBLMの映画だろうか。
ウェス・アンダーソンのストップモーションアニメ。
映像としてはよくできているが、なにを伝えたくて作ったのか、明確に読み取れない。
おおまかなストーリーは下記となる。
日本のウニ県メガ崎市で犬の伝染病「ドッグ病」と「スナウト病」が蔓延しはじめて、メガ崎市の小林市長はすべての犬を「犬ヶ島」に隔離する法案を通す。かくして、すべての犬が送られたのだった。
6か月後、犬ヶ島にひとりの少年が訪れた。彼は小林アタリ。小林市長の遠縁の親戚で、スポットという自分のボディガード役だった犬を探しに来たのだ。
メガ崎という地名は長崎のことだろう。
飛行機が墜落するシーンで、キノコ雲があがるのは、原爆を意識しているのだろうか。そうだとしたら悪趣味だと思う。
伝染病で犬を隔離する、という設定から、「コロナ」を連想するが、コロナは2019年12月1日に中国の武漢で最初の感染者が出たとされている。だから違う。
では他の角度から「なぜこの映画は作る必要があったのか」ということを考える必要がある。
本作では「犬は人間に服従するものだ」という言動が何度も出てくる。これは「ブラック・ライブズ・マター」を意識しているのだと思う。
記憶に新しい「ジョージ・フロイド事件」を発端とした大規模なデモが行われたのは2020年からだった。ただし、SNSなどで「#BlackLivesMatter」というハッシュタグが使われ始めたのは2013年からとされている。本作の製作は2015年に発表されているので、このムーブメントが意識されている可能性はある。
黒人の人権問題を意識した設定を、アメリカの属国と揶揄される日本を舞台にして作るということは、結局のところ、日本人はそういう扱いなのかと、暗澹たる気持ちになる。
本作の製作費は不明だが、興行収入は世界で98億円。日本では1.8億円。ざっくり日本での売り上げは2パーセント弱といったところ。ハリウッド映画において日本はさほど小さな市場ではないと思うが、このパーセンテージが多いのか少ないのかはわからない。
少し話がそれるが、娯楽が多様化する中で、映画産業の売り上げって、娯楽全体のどのくらいを占めているのだろうか。「大ヒット!」とか「新記録樹立!」といったコピーを目にすると、そんなことを思う。そして、インターネットというテクノロジーによってさまざまな情報にアクセスできるようになったというのは技術的にはそうかもしれないが、パーソナライズ化されて、見たいものしか提案されなくなってきているのも事実なので、容易にエコーチェンバーが起こる。
このような状態なので、結果的には「人は自分が見たいものしか見ない」という結論に落ち着く。
世界は進歩したが、人間は進歩していないのかもしれない。もしくは、進歩できる人は少数派、というべきか。受動的に情報を受け取るだけでなく、能動的に生きることを心がける必要がある。
風刺が効いておもしろい。
まず思ったことは監督が
…犬に対しての"愛"と
…日本の文化が"大好き"と
いうこと。
これだけ犬の愛情を日本を舞台に
繰り広げ風刺を交えた台詞に
クスクス笑ってしまった
監督の独特の見せ方がお洒落で
太鼓の音も音楽に乗せて
上手い演出です
…日本の文化も取り入れて
相撲、太鼓、歌舞伎、北斎画など
色々あるけど細かな細部まで
目が離せない。すしのところは圧巻
犬の豊かな表情が犬目線で楽しめる
棒を投げたら~ うれしくて取りに行く
オオカミの様に吠えちゃうとか
犬の本能だから
人に対する信頼の
忠誠心はスゴいと思った
あのノラ犬だったチーフが
知らず知らずに躾?られてる
忠誠を尽くさないチーフも
よかったけど
見落としているところもあると
思うけど何度みても新たな発見が…
…この世界観
ストップモーションアニメは
素晴らしい
…最後までワクワクした♡
ソフト鑑賞推奨
先日観たアステロイドシティが消化不良だったので再鑑賞。
かつてのハリウッド日本よりはだいぶ歩み寄りを見せているが、それでも日本語部分の作り込みはいまひとつ。
(日本語の会話が微妙に違和感)
まぁこの作品においては、日本語は雑音扱い(犬目線)なので細かい演技は必要なく、むしろわざとたどたどしく聞こえるようにしてるのかも…
その雑音部分を日本側は聞きたいわけで…
日本を舞台にしているのに日本人にはやさしくない出来(笑)
(ハーフ子役、オノ・ヨーコの起用)
細かい演出等のニュアンスを伝えるのに英語力があると、進行がラク。
アタリ少年をカナダ日本のハーフ、ランキンが演じているのもそのせいか。
日本人の英語力がないのも原因と思う。
吹替版においても全編ではなく、所々字幕になっている(犬語変換のため)。劇場だと情報量が多すぎて理解が追いつかない。
なのでDVD等ソフトで字幕版吹替版を交互に繰り返し観るような作品だと思う。
トレーシ(グレタ→後のバービー監督)、留学生の割には日本語下手やな(笑)
話題の一作ではあったが・・・
基本見終わってなんの感情も共鳴もなかった。優れたアニメであることと見る側の感情を揺さぶることは基本別物であり、監督の意図するところのエキゾチズムには個人的には興味が持てなかったと言うのが本音。
愛すべき傑作
ストーリーもさることながら
節々から溢れ出る犬愛、日本愛
彼のイメージする型にハマらない"日本"が
我々が度々目にしてきた"日本"よりも
遥かに独創的でクールだった
また、犬が可愛くて仕方ないのよ
ストップモーションアニメの質感が
そもそも好きなのだが、今作はどれだけ労力
かかってるのか、ってくらい緻密で素晴らしい
複雑な感情が犬の表情に表れていて
本当に胸に迫るものがあった
ありがとう、ウェスアンダーソン!!
ウニ県メガ崎市の小林市長
2022年7月18日
映画 #犬ヶ島 (2018年)鑑賞
声優すげえな
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だよ!
独創的で無二
絶対面白くないでしょ。と観る物ないから仕方なく観るか
と思ったら、
独創的で芸術性があって楽しく観れた。
ちょっと長いかなと思ったけど、
日本への皮肉と愛が詰まった無二の映画だなと思いました。
絵はほとんど正面だしカクカク動くし、台詞回しも変だし
だけど変を集めると不思議な事に面白くなって行く。
海外でよく見る、海外の人の想像の変な日本ではなくて、
徹底的に調べて、調べ尽くして変な日本を作り上げたと言う
感じでとても好感が持てた。
漫画、昭和映画へのオマージュとリスペクトもあって
素晴らしいと思いました。
90分くらいだったらベストかなと思いました。
メモ
・構図が美しい
・人形なのに活力を感じる
・背景音が少ないので音がダイレクトに伝わるのが心地よい
・最後、小林市長が負けたのは何故だっけ
・小林市長は最後に負けるが、それまでの犬を排除する戦略は見事
・シニカルな表現が面白い
テレビの情報を予言として伝える犬
共食いのレッテルを貼られている犬
資源が少ないゴミ島では下水がおもてなし
汚染された海、ゴミが堆積した島、火山噴火
特効薬を開発したことで殺される研究者
・黒いフクロウが象徴するものとはなにか
・目が活力の象徴
・調理シーンが滑らかで気持ちが良い
わかったようでわかんない
いっぱんじんならば、映画を好きだといっても、べつに誰かと映画について語り合うわけじゃないし、好きな映画がどれか公表することもないわけです。(リアル世界で)
学生のころは、そんな機会もありましたが、それにしたってまれなことでした。
そうすると、自分はこれ/あれが好きだということを、自分のなかに保管しておくのですが、たんに、自分のなかに保管してある主観なのに、好きが素直ではないことがあります。
これは、なんといいますか「これを好きじゃないと映画通ではない(ような)監督」に向けられた主観です。
よのなかには「これを好きじゃないと映画通ではない(ような)監督」がいまして、わたし的にその筆頭はウェスアンダーソン監督です。
でも、ウェスアンダーソン監督は、いいです。
ぜんぜんいい。
とうてい嫌いな監督ではありません。
しかし、低所得者層のわたしは、ウェスアンダーソン監督を、こころから楽しむ事ができません。
ウェスアンダーソン監督の作品世界と趣味が、すごく上質だということは、低所得かつ無教養かつお百姓のわたしにもわかるものの、じゃあ、こころから面白いって言えるか──となると「ええまあ」というかんじです。
だけどウェスアンダーソンは好きだって事にしておきたい。
というのも、ウェスアンダーソンがわかんないとなりますと、小津安二郎がわかんないことになりますし、ウェスアンダーソンと小津安二郎のあいだにあるものにも不寛容ということになります。
また、ウェスアンダーソン監督は、同業者からも敬愛され、その豪勢な出演陣からして、俳優からも敬愛されている、かなり「抑えとかなきゃマズい」存在なのは、まちがいありません。
だから、主観が、いささかずれるとは言え、ある種の違和をおぼえながらも「ウェスアンダーソンが好きです」のポージングをしなきゃならない──ような気がするわけです。
もっとダイレクトに言えば「これを好きじゃないと映画通ではない(ような)監督」ってよりは「これを好きじゃないと映画をわかってない」ことになってしまう監督とも言えるそんざい──なわけです。
わだいのThe French Dispatchが、Completedしていながらなんらかの理由で停まっていますが、それについても「ああたのしみだなあ」とか、主観のなかに居る、二面性の自分の片割れが、つぶやいたりしてみてるわけですが、じっさいには、公開で見るよりは、どこかに降りてきたら見る感じになるのは間違いありません。
あのThe French Dispatchのトレーラーのおもわせぶり。
2021に見る構図のある映画。
嗜む(たしなむ)──ということに対するお百姓として憧れをかんじる一方で、面白そうな気配値振りまくのやめてくれませんかねえ。とも思います。
でも、ウェスアンダーソン監督は、いいです。
ぜんぜんいい。
とうてい嫌いな監督ではありません。
だけど、なんといいますか、ごちそうよりもお茶漬けのほうが好きな、底辺の哀しさ──とでもいいましょうか。その幾何学を愛するには、いかんせんわたしには教養が足りないんじゃなかろうか──という、不安がもたげてきて、しかたありません。
犬ヶ島はいい映画でした。緻密でした。大量で濃厚な、情報と技術がありました。労作でもありました。
だけど、この寓話はどうでしょう。キャラクターやストーリーが、なんらかのシンボル(象徴)であるかのような気配が、常にありますが、出展元がわかる観衆がいるのかな──という感じです。
まさに他人のアタマのなか。
むろんそれが、良くないわけじゃない。映画はすさまじく精巧な模型のようです。
が、これを見ながら、小林アタリやメガ崎やロボドッグや交換留学生や俳句やヨーコオノやパチンコ(武器)や相撲レスラーや刺身などなどの、魅惑的な素材に、わかったような頷きをするのも、空虚なことだなと思います。
だって、どのみち寓意なんて解んないんだから。
でも映画は面白くないわけじゃない。構図至上だと思います。ぜんぶが小津の赤ケトルみたいな絵です。几帳面。に加えてレイヤーの層も深い感じ。ゲームデザインやっても、才能発揮できると思います。
余談ですが「なぜゆえに/じんるいのとも/春に散る花」という俳句が原爆をあらわしているような気がした。
いつの時代設定??
20年前となっていたけどパソコンあるのにテレビはブラウン管、靴下に下駄履、服装や髪型がなんかズレていて、テーマそのものはまあ面白いと言えば面白いけど、こっちの違和感ばかりが気になってしまって今ひとつ楽しめなかったかなあ。いかにも日本人じゃない人が作りましたの映画だけど、このズレ感はなんだろう?それとも敢えてそれを楽しむのだろうか???
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