「何故故に 人類の友 春に散る花 ?」犬ヶ島 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
何故故に 人類の友 春に散る花 ?
このところ物覚えの悪さで、光陰のように記憶が消えてしまうのでメモも取れずにいるのが大変口惜しい。だから表題もうろ覚えなので間違っていたら、ご指摘願います。
今作品、ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞したとのことだが、その出来は大変素晴らしいものであった。これがストップモーションアニメで作られたこと、ステレオタイプの日本を逆に上手く演出として表現した点、そしてそのベースにある、人種差別やホロコースト等の問題をキチンと誰でも想起させる世界観とストーリーに、誠に敬意を表する。しかしその堅苦しさだけではなく、パラレルのように人間と犬の関係、動物愛護、友情と兄弟愛、ニヒルで格好いい恋愛のスパイスを織込んでいるところも秀逸だ。自分は生きて今まで動物を飼ったことが無いので、犬という動物に対しての知識は、幼い頃に噛まれた事、追いかけられた事しかないネガティヴな内容だが、今作品でまさか、ホロッと泣かされる事になろうとは正直思わなかった。それだけ切なく、しかし決して人間を憎む訳でもない、健気な姿勢に心を打たれてしまったのは、自分でも驚いている。まぁ、現実的には犬を飼う経済力がないから友達にはなれないかもしれないが、今後の観方を変えようと転換させられる、それ程のスマートなメッセージ性を届けてくれた作品である。
『一寸の虫にも五分の魂』、『鬼の目にも涙』、そんな日本の童話もきちんと包摂している、監督の強い気迫が感じられる日本愛、大変秀逸であった。