「子供たちの心の影と光を繊細に掬い取った佳作」ぼくの名前はズッキーニ 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
子供たちの心の影と光を繊細に掬い取った佳作
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「ゴッホ 最期の手紙」を観た時も思ったことだけれど、最早アニメーション作品は本当に子供向けやファミリー向けという概念ではなくなったのだなと「ぼくの名前はズッキーニ」を観ながら感じた。
母親を亡くし(父親は不在)、身寄りのなくなった少年ズッキーニが児童養護施設と思しき施設へ預けられるようになり、そこで出会う友人や、初恋、そして自分の居場所を見つけるまでの物語が、ストップモーションアニメで描かれるのだが、なんだかアニメーションという枠を超えて、子供たちがそれぞれに抱えている悲しみや虚無感が映像として伝わってくる説得力がとても素晴らしかった。内容だけを考えればわざわざアニメーションじゃなくても?と思いそうなところだけれど、作品を実際に見ると、いやこのストップモーションアニメだからこそ、この少年たちの孤独感や、それぞれに複雑な心情を抱えて築かれていく友情や仲間意識のようなものがかえってありありと描かれたような気もしてくる。ところどころグサッとくるようなセリフ、施設の壁に貼られた子供たちのその日の気分を示すメーター、車の音がするたびに母だと思って玄関を飛び出していた子が、実際に母と対面した時に思ったこと・・・。一つ一つのシーンと演出がとても繊細で奥深くて、「子供が見てわかりやすいように」という価値観で作るアニメーションではまったくないなとつくづく思った。そしてそこが非常に気に入った部分だった。
70分足らずの短い作品だけれど、そこで語られる内容の濃さと深さはそれ以上のものだった。
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