「理想と現実のギャップに苦悩する若者達」火花 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
理想と現実のギャップに苦悩する若者達
もっと派手な作品だと思っていたが、予想以上に真摯に直向きに青春に向き合った作品だった。本作は、菅田将暉、桐谷健太の演技が光る、漫才コンビとしての成功を夢見て、理想と現実の狭間で彷徨う若者達の10年間の軌跡を赤裸々に描いた濃厚に青春が詰め込まれた物語である。
主人公・徳永(菅田将暉)は、相方と漫才コンビ・スパークスを結成し、成功して売れること、を夢見て研鑽の日々を過ごしていた。徳永は熱海で出会った漫才コンビ・あほんだらの先輩天才漫才師・神谷(桐谷健太)に惹かれ、神谷の弟子になる。東京・吉祥寺を拠点に、全く売れなかったスパークスは次第に頭角を現していくが、同時に、徳永は、自分が描く理想の笑いと観客に受ける笑いのギャップに苦悩していく・・・。
本作は、厳しい漫才の世界に身を投じた若者達の青春群像劇であるが、普遍性がある。青春時代に誰もが経験することになる夢を追い掛ける我武者羅さと、自分の理想と現実のギャップへの苦悩、即ち青春時代のほろ苦さが濃厚に詰め込まれている。当時の自分を思い返し、思わず頷くシーンが多かった。そんなに理想に拘らなくても、もっと現実的に巧く生きればいいんだよと画面に向かって叫びたくなるが、そんな私も、当時は天邪鬼で不器用だったなと思うと主人公と自分が重なり、胸が熱くなった。
台詞が多く、会話劇が中心であり、散漫な部分もあるが、桐谷健太のぶっ飛んだ生き方と菅田将暉の真面目でストイックな生き方が見事にブレンドされ、青春時代特有の、無限の可能性と、理想と現実のギャップへの苦悩と葛藤の入り混じった危うく不安定な雰囲気が画面から伝わってきて、心に沁み渡る。ラスト近くのスパイクスの漫才シーン。今まで秘めていた自分の想いを込めた徳永の台詞には息を飲む。菅田将暉の直線的な演技には迫力があり、青春を感じた。
ラストシーン、主人公達は夫々の次に向かって歩んでいく。主人公達には時間がある。若さがある。希望がある。人生の可能性がある。青春時代への惜別とともに、そんなことを感じさせるエンディングだった。本作は、青春は人生において一瞬の煌きであるかもしれないが、掛け替えのない時代であることをリアルに問い掛けている作品である。
みかずきさんこんばんは。
いつも共感ありがとうございます。
この作品はすごく感動したのに
何故か星が低いと改めて思いました。
DVD も買っていたのに。
いまなら★4以上かなと思います。
同じところで感動して菅田将暉の凄さにも驚かされます。