「地獄、地獄、地獄・・・明るい地獄」火花 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
地獄、地獄、地獄・・・明るい地獄
せっかくの全国公開に先立って、“セコい不倫ゴシップ”でお茶の間を賑わせてしまった板尾創路監督。それでも日馬富士暴行問題のおかげで目立たなくなったおかげか、週末興行収入ランキングはめでたく3位スタートとなった作品。これこそが明るい地獄なのか?
お笑い芸人の道は厳しい。かつてほど漫才番組が少なくなり、逆にバラエティー番組がテレビ欄の多くを占めている昨今。芸人たちの苦労話などを耳にする機会も増えてきた感があります。とにかく目が出ぬうちはバイト、バイトの生活で、どちらが本業なのかもわからなくなってしまうほどの貧しい暮らし。そうした下積み時代の芸人の姿が見事に描かれていたように思います。ちなみに芥川賞を獲った原作は読んだこともありません。
桐谷健太も菅田将暉も演技は良かった。“スパークス”の相方である川谷修士の演技力も伝わってきたと思う。それよりも印象に残るのが加藤諒!あの濃い顔が宣伝する缶コーヒーの自販機も存在感があり過ぎだった。ただ、悲惨なバイト生活を表現するにはもっと暗めの役者が必要だったかと思います。また、桐谷演ずる神谷の借金まみれになりながらも前向きな生き方には元気をもらえました。
漫才のシーンや、普段の会話のボケ・ツッコミにも笑おうと思えば笑えるのに、これは芥川賞を受賞した作品なんだという潜在意識があったためか、一つ一つの台詞の根底にある若者の人生哲学のようなものを感じてしまいました。特に公園の子供たちを前にして行うネタ合わせなんてのは、売れない芸人の懸命に稽古する姿と悲哀が入り混じった複雑な気持ちにさせてくれました。全体的には良かったのですが、やはりシリコンのエピソードは要らない・・・