「志」火花 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
志
間違いなくこの東京の片隅で生きてるであろう人達の話。
深く染みた。
何を戯けた事をと…美化してるだけだろ?と言う人もいるだろう。だけど、ああやって懸命に立ち向かってる人達を僕は知ってる。
この作品を観て、作者も監督も「お笑い」が心底好きなのだろうと思えた。
現場に立つ人間だからこそ、語れる部分は多分にあり、明確なリアリティが映し出される。流暢な関西弁は、そのリアリティを邪魔する事はなく、増幅させてくれてた。
最後の漫才は、まさしく歴史を覆すに値するネタであり、しっかり笑わせるところに笑いに対するプライドを感じた。
漫才パート全編に対して思うのは、活字では伝えきれないであろうライブな感覚と臨場感があった事。また、そこに臨場感を付与できるだけ、スパークスの2人は純然たる漫才師として存在していた。
いくつも心に留めておきたい台詞があり、芸人に引退はないと語る理由は、その最たるものであった。その感傷が薄れる間もなくエンドロールで流れる「浅草キッド」が凄くハマっていて…「夢は捨てたと言わないで。他に道なき2人なのに。」
この最後のフレーズに泣かされた。
夢だけを語るわけじゃない。
苦悩も充実感も、儚さも信念も余す事なく映像に刻みつけてあった。
飾らない主役2人が魅力的で…またそれに見劣らない相方たちも見事であった。
そして、音楽の入り方が大好き!
色々な才能が組み合わさって…
この役者がいた奇跡に。
この監督が撮れた奇跡に。
この歌があった事の奇跡に感謝したい。
タイトルは「火花」
右から読むと「花火」となる。
観終わった後、横書きのタイトルコールにそんな意図を想像し、なんとも洒落のきいた優れたタイトルだなあと思えた。
また、いつか観たい作品になった。