否定と肯定のレビュー・感想・評価
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難物だけど本物
難しすぎて面白さが分からなかった、というのが第一の感想。なにが私には難しかったか、というと、字幕読み取り力と内容の理解力が足りなかったゆえ。セリフの字面を追うだけではなく『この人がここでこう言うとは、つまり……』と場面・展開を踏まえたうえで、そのセリフの意味するとことを逐一抑えていかないと面白さは分からない。当然のことだが、とりわけこういう法廷モノはそこが全て。
そして法廷モノの面白さには、その判決がどうなるかのドラマ性に加えて、自分が展開についていけて、かつ判決を左右させる絶妙な言いくるめの応酬を裁判官にも勝る判断力でもって味わい、神の視点をもった傍観者になれる、という優越感も含まれよう。
つまり単純に作品が面白いかのみならず、法廷モノという難物を面白く見れる能力を自分が備えていることを確認できて愉快だ、という面白さも作用反作用のごとく同量伴っていると言える。
被告側の弁護陣営はプロフェッショナルで頼もしかった。理解力不足の自分には本作品の面白さは厳密には未知数なわけだが、作品自体は悪くはないと思う。
ひとつ言うと、字幕は素直な英訳と違い、表示する字数や時間において制約をうける。制約による難しさをも乗り越えてついていくには慣れも必要。なのに私は、劇場で字幕映画をみるブランクが半年ほどあった。この作品をみる前に、セリフ多めの字幕映画を2、3本みていれば、理解力もウォームアップされてまた違ったかもしれない。吹き替えがあればそちらがよかったかも。
一番印象に残ったのはアウシュビッツの映像。それも爆破されて埋もれたガス室の地面。ただの瓦礫の地面なのに戦慄を覚えました。かの『シンドラーのリスト』で、機関車がアウシュビッツの門に入っていくシーン、あのおぞましさ、あの戦慄、あの迫力。あれと同じ感覚を、なんでもない地面を映すだけで呼びさましてくれた本作は、本物だと納得できた。
こういう裁判の戦い方があるんだ。
史実にも色々な見方があるなー、と。
趣旨?,設定?は非常に好ましかったんだが・・・
事実を争っているわけではないあたりが難しい
アメリカの女性大学教授デボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)。
ホロコーストについての講演会場で初老男性から質問を受ける。
男はデイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)、ホロコースト(ナチスによるユダヤ人大量虐殺)はなかったと論じる歴史学者だ。
講演会での出来事はどうにか収まったものの、ある日、デボラはアーヴィングから名誉棄損で訴えられる。
アーヴィングの説を否定し、侮辱し、結果、出版社との関係も悪くなったと、と・・・
というところから始まる物語で、映画後半はデボラ対アーヴィングの法廷の場となっていく。
映画にするには非常に難しい題材で、その理由はふたつある。
ひとつは、ホロコーストがあったのか、なかったという点に絞るか、もうひとつは、名誉棄損にあたるかどうか。
何が難しいのか、ホロコーストはあったし、それがなかったという者については「アホか」と侮辱しても当然だろうとも思うが、名誉棄損は、たとえ侮辱した事柄が事実であっても、相手の社会的立場を気づ付けた場合は罪に当たる。
「事実であっても」である。
つまり、アーヴィングが説く「ホロコーストはなかった」説が誤りであっても、歴史学者として検証した結果、真に信じているならば「アホか」といってしまうと侮辱になり、罪になったしまう。
なので、取る戦法は、アーヴィングの説は、多分に恣意的であり、自己利益を図っての意図的な歪曲である、よって、その意図的な部分を「アホか」というのは道理的・道義的には侮辱に当たらない、とするのである。
映画は、かなりこの部分にこだわっているし、こだわらないと面白くならない。
なので、デボラ側の法廷弁護人(トム・ウィルキンソン)もその部分を論理的に突き、アーヴィングの説の矛盾点を突き、時期によって恣意的に変化していることを明らかにしていく。
けれども、論理一辺倒でも面白くならない。
というか、論理的にことに訴えるだけで、ホロコーストの事実が明らかになるのか、そう思ったデボラは、弁護団の方針を反故にして、自身が法廷に立ち、ホロコーストの生存者も証人として、事実を人々の感情に訴えかけようとする。
ここいらあたりの描写は興味深い。
事実の積み重ね、突合では無味乾燥になるし、感情に訴えかけるのが短期間でかなりの効果が見込める。
が、デボラの弁護団がそのような方針を採らないのが、さらに興味深い。
いわゆる「箸にも棒にも掛からぬ」似非歴史学者(アーヴィング)と同じ土俵に、真っ当なデボラを上げない。
さらには、ホロコーストの生存者を、アーヴィング(と彼と同じ考えの人々)の前に立たせて、過去の忌まわしい記憶を掘り起こさせたりさせず、さらに生存者たちの名誉を守ろうというのである。
論理に裏打ちされたヒューマニズムとでも言おうか。
そして、最後には(当然のことながら)デボラ側が勝つのであるが、その前に判事の信念が揺らいでいることがわかるエピソードがはいる。
つまり、アーヴィングは、心底から自説を信じているのではなかろうか。
であれば、信じていることが誤りだからといって侮辱するのは名誉棄損にあたる、と。
これは恐ろしい。
たぶん、この部分が映画の肝であるはず。
映画は、この後、裁判の結果についてテレビで滔々としゃべるアーヴィングが映し出され、「まるで彼が勝者のようね」と呟くデボラがいる。
ここで終われば、かなり恐ろしい映画になったはずなのだが、それをしていないので、少し焦点がぼんやりしてしまったかもしれない。
史実を争うことの難しさを痛感
米大学で教鞭を取る主人公デボラ・リップシュタットが、自著の中でホロコースト否認論者として糾弾した英国の歴史学者デイヴィッド・アーヴィングから名誉棄損で訴えられた、英国高等裁判所での裁判を元にしたドキュメンタリー的作品。作品の焦眉は、彼女の弁護チーム、とりわけ、スコットランド人法廷弁護士リチャード・ランプトンが、被告にされた故に冷静さを失いがちなクライアントの心に寄り添いつつ、綿密な事実調査に基いた、論理的で冷静沈着な弁論を展開するところでしょうか。実際にあった裁判が下敷きなので話の顛末は最初からある程度推し量れてしまうのですが、裁判の場面での論戦は本当に臨場感に溢れ手に汗握るものでした。また私自身、ポーランドのアウシュビッツで70年前に実際に起こったことを学べる良い機会になりました。
否定の否定。
ユダヤ人のホロコースト研究者が、ホロコーストを否定してくる輩に名誉毀損で訴えられ、裁判で闘うという実話に基づいた話。
何かと闘っている人にオススメな作品かも。
イギリスの裁判制度を知らなかったのだが、弁論や確たる証拠を積み重ねて組み立てて戦うという点ではどの国も同じ。
戦略や、相手をよく研究することが重要な点も同じ。
普遍的な闘いの物語として興味深く楽しめた。
裁判シーンがメインでやや地味な展開かつ描写なんだけども、個人的には人間ドラマ含め、十分見応えがあって一喜一憂をドラマチックに楽しめた。
実際にはどうだったのか知らないが、本作でのアーヴィングは訴えた側で、しかも自称歴史研究家のくせに、自身の論理的な防御が手薄すぎて、あきれた。
無知な自称知識人、はどこの国にでもいるということなのか。。
その矛盾や誤ちを気持ちよく指摘、反論してゆく弁護人の発言は至極真っ当で痛快この上なし。
私自身も主人公のリップシュタット同様、自分の良心や意見は自分の言葉でぶつけたい人種なので、彼女の歯がゆさにも超共感しつつ、支えるチーム勢やチームの力に涙。
自身の信念で考える最善の方法が、最短ルートにはならない場合、その道は困難になる、みたいなセリフがあり、しみじみ噛み締めている。
メインが裁判なので地味ではある
面白味に溢れた作品
「無かった」との主張を、「あった」と証明することの難しさがよくわか...
素晴らしき嫌なオヤジ
エンターテイメント映画です
ホロコーストが無かったという事は、ユダヤ社会にしてみれば最も隠したい部分でしょう。私は「有」なのか「無」なのかについてはどうでもいい派です。それよりも、映画を通じて嘘が言われるのが怖い。
この映画は、「美しく若い女性のユダヤ人」と「醜い老人」が戦う映画です。内容は陳腐で、あんなに頭の悪い醜い老人が歴史学者なんてありえないと思うし、裁判中の言動だって、自分から裁判を起こしているのに、有り得ない準備不足さです。誰がどうみても、ホロコーストは有ったとしか思えない内容になっています。情報操作と思われても仕方ないですよね。
裁判結果は最後まで解らないように仕立ててあります。そういった意味でちゃんとエンターテイメントしてます。
他人に委ね得るほどの良心を自分は持っているか?
裁判に関わったことのない人間には縁遠い世界の話のように思っていたが、一般的な生活に於いても日常起こり得る様々な局面や葛藤に繋がるテーマがたくさんあり、脚本を文章に落として再読したくなった。
期限を区切られた中で、どれだけ資料を渉猟し、根拠のある、戦える、或いは勝てる論点を提示するか。
良かれと思う方法や言動が、思わぬ形で人(この作品ではホロコーストの被害者)を致命的に傷つけることがあるかもしれない、と想像力を働かせることの重要さ。
先生や上司にその想像力がない為にいかに多くの生徒や会社員が心を病んでいることだろう。そもそも良かれと思う以前に自分のことしか考えていないのかもしれないが。
良心を他人に委ねることも難しいが、委ね得るほどの形をもった良心を自分は持っているのか?
新しい年に向けた気持ちの在り方とか他人との接し方などを考えるのにとてもタイムリーな中身の濃い作品でした。
さすが外国
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