「「ポスト真実」の時代のコンテンポラリーなテーマ」否定と肯定 SungHoさんの映画レビュー(感想・評価)
「ポスト真実」の時代のコンテンポラリーなテーマ
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ホロコーストに関する研究者と否定論者との名誉毀損の法廷論争を映画化した『否定と肯定』。主演は、ウォン・カーウァイ『マイ・ブルーベリー・ナイツ』でアルコール中毒の警察官の元妻役を演じ、実生活ではダニエル・クレイグの奥さんでもあるレイチェル・ワイズ。
昨晩の『女神の見えざる手』に引き続きディベートをベースにした脚本なので、ずっと右脳を働かせながら見る感じが心地よい。
「ホロコーストはなかった」ということを訴えたいがために、反対論者を名誉毀損と言うかたちで法定に呼び出す老歴史家と、それに対してときに感情的にも反応していまいそうになる被告人のユダヤ人女性研究者と、彼女をサポートする熟練の弁護団。
レイチェル・ワイズ演じる研究者には「ホロコーストは存在した」ことをあらためて証明したいという焦りがあるが、そうではなく訴えられた点について緻密に論証をしていく戦略を貫く法律家たち。しかし法律家たちも、その論証を通じて結果的にホロコースト反対論に対する疑わしさをアピールしていくことになるのがとてもクール。
「最善の策だが、最大の効果をもたらさない策はとても厄介だ」
ポスト真実の世界に至った現代にとてもマッチしたテーマ。
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