「ビートルズを歌ってくれなきゃ意味が通じない」きみの鳥はうたえる kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ビートルズを歌ってくれなきゃ意味が通じない
サブタイトルが「And Your Bird Can Sing」となっていることで意味が分かる。というより、ラストシーンにそれを全てぶつけてさえいるのだと思う。ただし、日本人向けにスカビートの「オリビアを聴きながら」を佐知子に歌わせていることで、出会いと結末を考えさせる効果もあった。
そのビートルズの曲の直訳風タイトルが面白いけど、この曲自体が多分色んな意味を持たせている意味深な歌詞なのです。“You”がミック・ジャガーだとかポール・マッカートニーだとからしいのですが、“Bird”は恋人を表すスラング。真っすぐに捉えると、柄本佑はずっと一人称“僕”なのだから“You”は当然染谷将太演ずる静雄であり、“Bird”は石橋静河演ずる佐知子のことだろう。
書店で一緒にバイトをしていたこともあり、ひょんなことから体の関係を持ってしまう“僕”と佐知子。妻子持ちの店長(萩原聖人)と付き合ってることも知っての上だから、「好き」という言葉も発しない、大人の付き合いだったのだろう。しかし、はっきり別れると切り出したところから感情が揺れ動く。そして店長から直接「離婚した」事実も聞かされるなど。そのモヤモヤ感は不誠実を増大させ、暴力行為にも発展し、ついにはフラフラ感へと展開する“僕”。こうして文章化してしまうと人間関係がより面白くなるのです。
バイでもないけど、静雄のことを大切にしている“僕”がいて、二人で映画に行かせるなどという余裕の態度で許してるのもそのためだろう。男2女1の関係はとかく名画に多い気もしますが、いつかは微妙な関係も破綻するのが常。静雄が無職であり、母が倒れたことをきっかけに大人として成長しそうな予感もするので、二人を見守ってもいい気持ちになったのだろう。「本心ではない」「好きだ」というラストの“僕”の言葉によって石橋静河の表情が数秒の間に戸惑い、怒り、嬉しさを見事に表現していたけど、彼女にとっては終わったことになっていたのだろう。「遅いよ」という言葉を発するのだと予想しましたが、彼女の気持ちは観客にゆだねるという手法で人と語り合いたくなる締めくくりでした。
尾崎亜美の「出会った頃は・・・来るとは思わずにいた」という歌詞がとても切ない、大好きな曲です。その歌の含みだけをもぎ取ると、“僕”とは終わった関係なのでしょう。そして前述した「静雄の恋人」というタイトルからしても、結局は静雄と恋人になるってことなのだと推測します。KYな森口もなぜか憎めない・・・
〝語り合いたくなる締めくくり〟
確かにそうでした。
自分の人生で、120まで数えてみたくなるような局面があったかな?
これからあるんじゃない?
というところからみんなで盛り上がりたいなと思いました。