「手札はよかったのに出す順番を間違えた7並べのような映画」DESTINY 鎌倉ものがたり 世田谷マンさんの映画レビュー(感想・評価)
手札はよかったのに出す順番を間違えた7並べのような映画
キャスト、世界観、主題歌、音楽、映像、そして鎌倉の圧倒的な土地ブランド、それらの素材は良かったのにその配分と調理の順番を間違えてしまった。
まず黄泉の国パートが意外と短い。まぁ黄泉の国物語じゃなくて鎌倉物語だから、鎌倉の景色がメインで一向に構わないんだけど。
宣伝では大人の都合じゃあきらびやかなところばかりを切り取ってるから、なおさらcmとのギャップが生まれてしまうのは仕方ない。
ただ、だとすると、黄泉の国パートに入ってから新しく出てくることが多すぎる。急に行った違う世界で、急に出てきた情報を、短い時間で回収する。これがあまりにも多く、詰め込み感を否めなかったです。
あと、タイミングが悪い。「平安の昔から結ばれ続けた」なんてロマンチックな話は、4段階くらい伏線張って、クライマックスでようやく出すのが王道でしょう。それをちょっと今出てきたばかりの敵役の、小話流れでポロリしちゃうとか…。
別に王道じゃなきゃダメなんて言ってるわけじゃないですが、映画ってのはベタか意外性かの争いではなくて、観客の感情の揺れ動かしをいかに最大化するかというのが争点のコンテンツだから「ベタ筋書×王道演出」を見たかった…。そういう点では、伏線の引っ張りが弱すぎる。(あるっちゃありましたけど…弱い)
あとラストシーン。
自分の生い立ちの下りを黄泉の国に行ってからもひきずっていたのはまぁいいとして、黄泉の国から帰ってきたあとの後日談にまたその話題?アナグラム?パンフレットの裏話でやればいいんじゃないのか?それこそ「平安の昔から〜」をここで答え合わせするのが良かったんじゃないかなぁ!?(キレ気味)
以上です。
手札は良いですが、7並べは出す順番を考えないと簡単に負けます。
堺雅人・高畑充希の押しも押されもせぬ人気実力派キャスト、日本映画であまりお目にかかれないハイレベルなVFX技術を駆使した映像美、そして宇多田ヒカルの唄う主題歌、ここまでの手札はなかなか回ってきません。あとテーマも良かった!夫婦の愛ってまたベタなんですが、登場人物の愛らしさもあって終始にやけてました。けど…
それを正しい順番で出しさえすれば…って感じでした。おしい!