「映画らしい脚本」彼女がその名を知らない鳥たち tomokiri2216さんの映画レビュー(感想・評価)
映画らしい脚本
冒頭、主人公は電話をかけてクレームをつける。そこから始まる映画のシーン。脚本は浅野妙子さん。原作には描いているが、主人公の母との関係があり、男性に固執してはいけないと思いながらも、過去愛した男に8年も固執している。
5年ぐらいなら、過去の男性を思い出したりするが、8年となると長いように感じる。それは、主人公が自立せず、男性に頼って生きているからかもしれない。毎日千円、二千円のおこずかいをもらい、ビデオを見ては時間を過ごす毎日。
文句ばかりジンジに言っている主人公。様々な動作を昔の恋人と比べ、「こんな男とどうして暮らしているのか」と夢想ばかり。
そして、とうとう、遊びの恋をする。
その男性も過去の男性同様、主人公とは遊びだったのだ。
ジンジは、古いマンションを買い、主人公と暮らすが、主人公の心はいつもどこかにある。「これは愛ではない」と。
昔、日本には「愛」という単語はなかった。
「情」という名の「愛」しかなかったのだ。
なんとなく、好きとかではなく、家同士のお見合いだったり。
まずは暮らしてみてから、徐々にお互いを知る。そんな営みだったはずだ。
しかし、現代は違う。年老いた親の為に結婚する人はおらず、「愛」という名目で婚姻するのだ。
つまり、価値観や、収入や、外見など「これぐらいだったら許せる」と思える人を自分で探さなくてはならない。
そして、それが崩れると離婚となる。
そこには親は関わらず、夫婦間の問題となる。
ジンジはそういうことは何も考えていない。ただ
主人公を幸福にするのは自分だけだと、大きな「情」で包み込むのだった。
最後のシンジのセリフは、とても重い。
そのセリフは映画館で聞いてください。
その言葉は「俺しか、お前のような人間を愛せるわけがない」
と言っているように感じる。
蒼井さんはきっと賞を取るでしょう。
女優として素晴らしい成熟期を迎えています。