「キャスト、シナリオ、世界観、すべて素晴らしい。」彼女がその名を知らない鳥たち ちゃーるすとんさんの映画レビュー(感想・評価)
キャスト、シナリオ、世界観、すべて素晴らしい。
「幸せとはなんなのか。」非常に、考えさせられる映画だった。
愛とは、付き合うこと?結婚すること?セックスすること?
人間が愛するという行動は様々な形があるが、正解はない。
その人が間と思えば、それは成り立つが一致することも少ない。
蒼井優演じる十和子、最近の蒼井優はこういう役ばっかりだけど、演じさせたら右に出る者はいない。
阿部サダヲ演じる陣治のキャスティングは、監督並に意外だったが、阿部サダヲの全身で感情を伝える演技が陣治ピッタリで、十和子への愛情があふれ出ていた。
自分の生活に結び付けて、愛情とは何なのか。考えるきっかけになると思います。
蒼井優ファンにとっては、濡れ場が多すぎて、ショックかも、、
====================以下、ネタバレ===========================
ストーリーを分解すると、
起:十和子と陣治の生活
承:黒崎への愛情、姉の言動による十和子の行動変化
転:水島への愛情
結:陣治への愛情
といった具合に展開されていく。
起
十和子と陣治は、薄汚いマンションに住み、ただただ飯を食らう。恋人通しであっても、十和子は陣治への愛情は薄く、奉公人として扱っている感じ。こういったシーンが映画にたびたび出てくるが、それが陣治と十和子の"生活"であり、それ以上でも以下でもなく、日々が過ぎていくことを印象付ける。
時折、黒崎との生活がフラッシュバックするものの、それは"DVD"としての"記録"であり、陣治との生活への不満が、クレームとして劇中に表現されている。
このシーン、原作ではここまで象徴的に表現されていない。
承
クレーム対応で親密になってしまった水島という男に感情を揺さぶられ、遊ぶようになると、十和子の姉が相手は黒崎ではないかと疑いをかける。
その疑いをきっかけに、黒崎への愛情を次第に思い出していくが、陣治はかたくなに黒崎ではないと言い張る。
このシーンがこの映画のポイントで、観客にどういった信じるがあるのかを考えさせるシーンだった。
それをきっかけに、十和子の黒崎への思いが再びわき始める。
転
しかし、黒崎は失踪したと警官から告げられる。黒崎の妻に会いに行くが、そこで衝撃の出会いをする。
それを機に、さらに十和子の気持ちは水島に向く。とともに、十和子を尾行していた陣治への嫌悪も抱く。
陣治の尾行に気づいた水島は、十和子と距離を置こうとするが、水島自身が面倒になったのだろう、十和子を断って違う女と遊んでいるのを十和子に見られてしまい、十和子の気持ちが一気に殺意へと変わる。
十和子は水島を殺そうとするが、尾行していた陣治に止められる。そこで、黒崎の失踪の真実について思い出す。
結
黒崎は十和子が殺したのであった。陣治はその真相を隠す意味もあり、十和子を愛し続けたのだ。
陣治は、十和子が真相を思い出したのを確認した後、十和子の目の前で自ら命を絶った。
陣治の大きな愛情に気づいた十和子の前には、陣治が生まれ変わったたくさんの鳥たちが飛び立っていく。
この映画のタイトルにもある、"鳥"は、十和子の愛を表している。
十和子は陣治の思いに気づくまで、本当の愛に気づけていなかった。
それを感じた映画のラスト、号泣してしまった。
印象的なシーンが多かった。
・部屋が崩れ、黒崎との思いでに遷移するシーン
・ラブホでの十和子の気持ちが水島に向く、砂を使用したシーン
・陣治が死ぬときになって、十和子が陣治との生活を振り返るシーン(一番泣けた)
クズはクズ。実際の世界だってそうじゃないか。
ただ、最後に気づけた十和子はクズじゃない。
不可解なシーンもあまりなかったし、陣治のまっすぐな(ゆがんだ)愛情に、素直に感動できる映画だった。
白石監督が愛の映画を描くと聞いた時、嘘だろと思ったが、白石監督ならではの、暗いラブストーリーに仕上がっている。
にしでも、松阪桃李のラブシーンは上手すぎる笑