「鳥たちの名前は「しあわせ」」彼女がその名を知らない鳥たち りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
鳥たちの名前は「しあわせ」
三十過ぎの女性・十和子(蒼井優)。
彼女の生活は自堕落だ。
十五歳年上の肉体労働者・陣治(阿部サダヲ)に寄生し、働くでもなし、時間があればクレームをどこかしこにでも入れている。
そんな十和子には暗い過去があった。
自分勝手な男・黒崎(竹野内豊)と交際し、いいように弄ばれ、最後は暴力を振るわれて別れた。
だが、心の底では、そんな黒崎のことが忘れられない・・・
ある日、思い余って、黒崎のケータイに電話したことがきっかけで、警察の者が十和子を訪ねてくる。
黒崎は5年前に失踪したが、行方を知らないか、と。
8年前に黒崎と別れた十和子には身に覚えがない・・・
というところから始まる物語で、その後、十和子は、買った時計のクレームを付けたことから売り主の貴金属販売店の専務・水島(松坂桃李)との情事に溺れていく、と展開する。
まぁ簡単に言ってしまえば、男を見る目のない女が下衆な男にいいように弄ばれるハナシで、そういうと身も蓋もないがそんなところだ。
とにかく、十和子が惚れる男はヒドイ。
借金のカタに、十和子を老齢の貸主に抱かせる黒崎。
その上、その貸主の娘と結婚するので別れろと迫り、遂には殺人一歩手前の暴力に及ぶ。
水島は水島で、クレーム処理に困ったふりをして、安物の時計をさも高級品かのように装い、自腹を切ってプレゼントしたかのようにみせて十和子を釣る。
さらには、公道上で性欲処理をさせるというゲスっぷり。
類は友を呼ぶとでもいうのか、そんなところだ。
そんな十和子に只管尽くすのが陣治で、とにかく尽くす。
無視されても足蹴にされても、尽くす。
なので、黒崎の一件は・・・
と、まぁそんな風に想像するが、さにあらず、というのがミステリな趣向。
映画の謳い文句は「あなたはこれを 愛と呼べるか」というような、ショッキングな結末を迎えるのだが、うーむ、愛と呼べるのかどうか。
一見「無償の愛」のようにも見えるが、「身勝手」ともいえる。
が、あの結末では、警察としては自己や事案としては看過できず、必ず事件沙汰になることは必至。
そこんところは、腑に落ちない。
タイトル『彼女がその名を知らない鳥たち』の鳥たちの名前は「しあわせ」だろう。
『彼女がその名を知らない鳥たち』とは、「彼女はしあわせをしらない」の意味だろう。