「これを愛とは呼びたくないかも。」彼女がその名を知らない鳥たち だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
これを愛とは呼びたくないかも。
映画としてはとてもよく出来ているというか、結構すごいと思いました。
まあ、ミステリーには大変疎い素人だからそう思うのかもしれませんが。
大分最後まで陣治が黒崎を殺したと思っていましたものね。
まさか十和子やったん?ってもんです。
黒崎、水島のどちらもすっごいゲスで、そら見目麗しいけれどもそれだけじゃん。
行為を撮影する男とか気持ち悪くね?(その映像を盾に十和子は脅されるじゃん)
妻子もちの百貨店社員に沙漠への一人旅なんて優雅な余暇ありえなくね?(沙漠旅行は真っ赤なウソ、誌的な感想も本のマルパクリ)
っておもってたらさー。ほらいわんこっちゃないって感じやんか。
黒崎の暴力シーンはおぞましく、パトロン的じじいに十和子を差し出すとかもマジ無理って感じやし。
水島のバカさ加減(名簿紛失して陣治のせいにする、速攻で別の女と遊ぶ)もきもちわるいことこの上ない。
私は、ああいった男に愛されたくて愚かになってしまう女の気持ちにまったく共感できない派なので、
バカが見る~なんとかのケツ~的な感想しか持ちません。
性欲につきうごかされるって程度ならばまだわかるけど、十和子は本当に愛されたくて愛していたわけでしょ。
なぜそんなに視野が狭まるの?もともと視野が狭いから?
もう?マークを大量に噴出しながらの鑑賞でした。
が、それでも見られる、興味が尽きないという点でいい映画だと思います。
唯一切ないなと思ったのは、陣治ですかね。
十和子の罪を隠して隠して。あげく罪を被ったことにして死ぬ。
それで十和子が救われるかといえばそうではないと思います。
もっと知性があるならば、陣治の愛は私にもうらやましいと思える愛し方だったと思います。
でも彼は知性という側面の人間性が脆弱。なのでああいう事しか思いつかない。
十和子を愛するその方法が。
その不器用ながら差し出した人生は、たしかにちょっとぐっと来る。
ただあれを愛とは呼びたくないですよ私は。肯定する気にはならないよ。
陣治が死んだ後、十和子はどうなるんだろうとぼんやり考えました。
水島は警察にいく?本人が何ぼ行きたがらんくても(自分の様々な悪事が露呈したくないから)、
あの怪我じゃあ、周りが届けてしまうかもだし。だったらすぐ口割りそうだし。
そしたら十和子は傷害で逮捕?それとも芋づる式に黒崎の事もばれる?
まあなんでもいいか。思い出した時点で十和子はもう今までどおりでは生きられないだろうし。
役者はすごいなあ、という感想も持ちました。
蒼井優が持ち前のかわいらしさを完全に消して、怠惰で浅はかな女を見事に演じておりました。
理不尽なクレーマーやってる(多分)無職の人を何人か知ってますが、
皆こんなかんじで、うまく行かない人生の腹いせをしてんのかなっておもいました。
阿部サダヲもすごいです。画面はにおわないけどぜったいくさいやろってゆう造形、
食べ方の汚さとか(毎回あつってゆって一回吐き出すの面白かった)、いつものかわいい阿部ちゃんの片鱗なし。
竹野内豊も松坂桃李も嫌いになりそうなゲスを見事に演じておられ、すごいなあと思いました。
特に淀川沿いで口唇奉仕を強要するシーンが、今後の役者人生の汚点になりゃしないか心配になるほど、
にくったらしくて、ちょっとさがせばすぐに見つかる感じのTHEゲス野郎で、見事でした。