「クネクネした真っ黒のドジョウ」彼女がその名を知らない鳥たち KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
クネクネした真っ黒のドジョウ
冒頭から十和子の高慢クズっぷりに惹き込まれる。
蒼井優って柔らかくボソボソした声のイメージだったけど、意外と甲高くよく通る声だったことに少しびっくり。
こんなクレーム絶対受けたくないなー!と思いながら観ていた。
これ以上無いってくらい徹底して汚く愚図で生理的にイヤ〜な陣治に笑っちゃうんだけど、なんだかかわいそうでかわいそうで仕方がない。
酷い言葉を浴びせられても浮気されても、一方的な奉仕をし続ける彼の姿に恐怖すら感じつつ、その異常に深い愛に最後はなぜか涙が出て止まらなくなる。
どう生きてきたらこんな人になれるのだろう。いや別になりたくもないけども。
黒崎と水島のクズ男っぷりもなかなか。
トンデモ展開で不倫関係になる水島なんてもはや演技派で、そのモチベーションに謎の関心すら覚える。
どちらの男もポエムみたいなことを大真面目な顔でペラペラと喋っていて気持ち悪いんだけど、でもこういうのにコロッと惚れちゃうのもなんだか分かるな…
映像演出がかなり面白い。
時に舞台的で幻想的で、過去と現在を継ぎ接ぎしたつくりが楽しかった。
関西弁が少しわざとらしく思えたけど、それぞれの目線に籠る強い感情が伝わる演技もとても良かった。
あのラストには何か新しい価値観を発見した気がする。
重くのしかかるけど上質なミステリーであり、少し変わった愛の形を観れる映画だった。
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