「ロマンチストは大地に眠る金の夢を見るか?」ゴールド 金塊の行方 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンチストは大地に眠る金の夢を見るか?
実話系の作品は権利の関係なのか、小うるさく口を挟んでくる人がいるのか、なんだか小さくまとまってしまう作品も多い。
しかしながら、今作品は思いきりの良い脚色とテーマ設定で巧みに物語を展開した良作と言えるだろう。
「今ここにはない金に投資する」ということと「自分以外の誰かに心を許す」ということは、似てないようで似ている。
それは「目に見えないものを信じる」という一見愚かな行為であり、誰もが日常的に行っている行為でもある。
今作品の主人公・ケニーはそのどちらも信じている人物であり、だからこそ主人公に相応しいとも言える。地中に眠る金の存在を信じて人生の一切合切を賭けてしまう男。出会ったばかりの地質学者に命まで預けてしまえる男。
綱渡りの生活で、浴びるように酒を飲み、それでもケニーと一緒に働いているワショー社の社員を見ていると「ああ、ケニーを信じているんだな」と思う。
オフィスさえ無くなっているような状態で、一体何を頼りに働くのか?ケニーが信じるに値する男だからじゃないのか。
どうしてそう思うのかと問われれば、それはケニーが自分達を信じてくれているから、と答えるのではないか。
マイクがケニーと一緒に過ごした時間は、ケニーの人柄を理解するには充分だった。ケニーはいつも通り情熱の全てを鉱山に傾け、生死の境を彷徨いながらもマイクを信じ続けた。
ワショーの社員たちがケニーを見捨てなかったように、マイクもまたケニーを失望させるわけにはいかなかったのだと、そう思う。
ケニーの期待に応えられる方法。ケニーとマイクがどん底から「カネしか信じていない奴ら」を見返す方法。それは悪魔の囁きか天の啓示か?
ラストシーン、マイクから送られてきたエアメールの封筒を見ただけで、私は画面のケニーと同じくマイクの存在を再び感じられる喜びと少しの寂しさを味わった。
表舞台に出て来てくれなかったマイクは一体何を書いて寄越したのだろう?と。
古びたナプキンに自分の筆跡。「見返してやろうぜ。儲けは50:50」そして小切手。
マイクからの手紙は自分との約束を果すものであると同時に、マイクとケニーの契約は終わったのだという証でもある。
「マイク・アコスタはもういない。嘘つき地質学者をお前が背負いこむことはない」
マイクはそう言いたかったのではないだろうか。突き放すようなマイクの優しさは、ケニーが信じた友情を感じさせてくれる。
さて、次はどんなロマンを探しに行こう?